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deputy

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 あなたの肌は百合の花の如く、白く香しい。
 わたしの心は灼熱の炎の如く、熱く猛々しい。
 どうすればあなたに近づく事が出来るのでしょう。
 毎夜枕に頭を置く度にあなたの事を思い、胸が苦しくなります。
 この苦しい胸の内を、あなたに伝える為にこうして筆を取りました。
 遠くから見ることしか出来ないわたしです。
 一方的に思いの丈をぶつけるわたしを許してください。



 「何、この手紙?」
 薄桃色の和紙をひらひらとつまんで、京子が胡散臭そうにそう一言放った。
 京子の前に座っていた美紗は困ったように笑うと、京子から和紙を引き抜き、先ほど京子が朗読したその手紙に視線を落とす。
「下駄箱に入ってたの」
「うっわ、気持ち悪。ラブレター? ありえないっしょ? あなたの肌は百合の花の如くって。しかも毎晩思うとか、きっしょ!」
 心底嫌そうに顔をしかめる京子に、美紗はため息を吐く。
「そんな言い方酷いよ……まあ、ちょっとびっくりしたけど」
「てかさあ、これくれたヤツって誰? 封筒にも手紙にも名前書いてなかったけど」
 ここは美紗と京子が学校帰りによく寄り道をするファストフード店。いつも若者で溢れる店内は少し大きめのBGMがかかり、人の話し声でがやがやと騒がしい。
 京子は美紗の向かいの席でコーラを飲みながら、まだ気持ち悪そうに首を傾げている。
「分かんない」
「あー、あいつじゃない? 隣りのクラスの何とかってヤツ。あいつ美紗の事好きって一時期噂になったじゃん」
「そうかな?」
 美紗は2か月ほど前に一瞬だけ噂された隣りのクラスの男子の顔を思い浮かべた。
 しかし、どうも違う気がする。
 噂も本当に一瞬で、今では全くそんな話しは聞かない。
 大体美紗は恋愛事に疎かった。
「んじゃあ、先輩とか?」
「何で先輩になるのよ」
「分かんないけど。でもさあ、まともじゃないよね。こんな今時あり得ない文章でラブレターとか、ロマンチスト気取りかナルシストか60年代オタク? 便せんだって何で白紙が一枚入ってんのよ? 書いてる一枚だけでいいじゃん」
 コーラをずずずと啜ると、京子はすっかり冷めたポテトを口に放り込む。
 彼女は一体古くさい文章にどんな恨みがあるのか、ちょっと変わったラブレターに先ほどから懐疑的だ。
作品名:deputy 作家名:迫タイラ