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しらとりごう
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novelistID. 21379
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ブローディア夏

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番外-キミが悪い(共有)




「木野、届け出してこよう」

 石間が黄色い紙を突き出して来た。

「はんこ……」
「や、名前かくだけ」

 届け。……あ、早退届け?

「石間」
「なんだ」
「俺帰る気ないよ。次体育出たいもん」
「見学できる状態なのか」

 木野はクリクリと髪を弄っていた。
 困ったと先生に目配せしているのがわかって、俺は無理矢理起き上がってセーターを脱ぐ。

「行こう。みんな石間を待ってんじゃない」
「駄目。帰んなきゃ駄目。熱あんだぞ?」
「ああ。教室に帰る」
「木野」

 石間が俺の腕を掴んだ。冷たくて気持ちいい。
 空気が動いたせいで石間の香水が香ったが、それはいつまでたっても慣れないものだった。

「俺は女じゃないよ」

 石間が一歩さがる。
 俺は女じゃない。カーテンの中でこそこそ話してるなんて止めないといけない。

 そうだ。
 どうどうとしてればいいんだ。

「わかった」

「きっ、」

 石間も声が裏返ったり、するの。
 セーターの毛玉がついたワイシャツを脱いで、その中に着ていた少し大きめのTシャツも脱いだ。汗で少しやわやわしてるけどしょうがないや。

「これ返す」
「木野」

「俺帰るから、これ着て体育出ろよ」
「うそ」

 俺どうかしてる。
 もういい。痺れる指でボタンを留め直して、さっき脱いだセーターも被った。膝の上に置いたはずの石間のTシャツはとうに奪い取られてた。
 石間がワンポイントの赤いマークをまじまじと見て、石間と俺の匂いのするそれに顔を埋めたりして。
 この赤いマークのブランドが石間のお気に入りってことは、ここの生徒なら皆知ってることで。

「これ昨日うちに」
「ああ。でもまさか……さあ」
「どういうつもりなんだよ」

 石間が俺の頭の上で笑っている。

 俺どうかしてる。
 これを体育で着て、どうするつもりだったんだよ。

 石間の笑い声が近付いて、そのまま髪の毛に込められた。

「恥ずかしいんだから笑うなよ……」
「まさか着てくれるとは思わねえじゃん」
「着たくなかった」
「着て欲しかった」

「最悪」
「え、怒るなって」

 …やっぱ俺どうかしてる。
 でもそれは、キミが悪い。


おわり


作品名:ブローディア夏 作家名:しらとりごう