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桜と雪と新年、そして……

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新年をやっと迎え聞こえてくる鐘の音が山彦を使い山の中に響いていた。
 その山は異常な景色が広がっていた。
 冬を象徴するさらさらと降る雪、そして春を象徴する桜が一面を覆っていた。
 それが一度に見える場所にある屋敷の外に面している廊下に男性が一人いた。
 男性は屋敷を支えている柱にもたれながらも酒の入った盃を軽く傾けていたがその盃を廊下にゆっくりと置いた。

「あけましておめでとう。それと久しぶり」

 端から見ると独り言を言っているような男性の背後の部屋から一人の人物が歩いて来た。

「てっきり忘年会と新年会に出ていると思った」

 声の人物――女性は座っている男性の横に立つと毎年見られる景色を見た。

「あんなのに出るほど俺の心は広くない」

 男性は女性に視線を向けようともせず、景色を見続けた。

「私的には出ていて欲しかったけどもね」
「一人でこの景色を見たかったか?」

 桜と雪が差しのべられた女性の手の上にのった。雪は水となり、桜は手の上に残るのを見ると女性は首を横に振った。

「いいや。この景色が見られれば十分かな……」

 女性は言葉を続ける。

「……まぁ、一人の方がよかったけども」

それを言ったあと溜め息を吐いた女性は踵を返し、歩き始めた。

「一緒に飲むか?」

 男性は自分の横に置いてある盆にのっている何も入っていない盃を持ち上げた。
 女性は歩いていた足を止め、何も言わずにさっきまで立っていた場所に座った。

「少しだけだからね」

 笑みを浮かべる男性から盃を受け取ると女性はすぐに近くに置いてある徳利から酒を盃に入れた。
 男性は置いてある盃を持つと再び盃を傾けると女性も続いて盃を傾けた。

「そういえば……」

酒を一口だけ飲んだ女性は思い出したように口を開いた。

「言ってなかったわね……あけましておめでとう」