裏ふぁーすとでーと?
7
「「――はあああああぁぁぁ……」」
ファミレスで同時に俺たちは深い溜め息をついた。
「――さっきからどうしたんだオマエら?」
はしゃいでたと思ったら、思い出したように溜め息ついて。
ドリンクバーのコーラをストローでかき混ぜながら、金髪が問うてくる。
俺と黒崎は無理矢理笑顔を浮かべて、
「なんでもない、なんでもない」
「そう。たいしたことじゃないから」
品良く微笑んでみせてから、黒崎と顔を見合わせ――
「「……ふううううぅぅぅぅぅ……」」
海溝より深い溜め息をつく。
「……だから何があったのだ?」
……訊いてくれるな、メガネ……。
……結論だけいうのなら、「死ね。大宮。」といったところだろうか。
――人間は羞恥心を持つ生き物なんだと俺は心底実感した。
我に返らないなんて出来るかああああああぁぁ!!!!!
いま情けねーな、なんて思ったヤツ!!
いますぐ俺らと替われ!!
貴様は大宮の指示の恐ろしさを知らんから、そんなことがいえるんだ!!!
「――何やってんですか、二人とも。
目の前のものに集中してください!」
俺らは目の前の――やたら乙女チックなパフェをみて、また嘆息しそうになる。
『ロマンティック乙女のピンクパフェタワー☆』というのが正式名称らしい。
あーうん。
カップルでつつくなら確かに向いてるよなー。
「――ほら桜田さん! 真冬さんにアーンってしてあげてください!!」
――できるくわああぁああぁぁ!!!!!!
テーブルを思わず、一徹返ししそうになるのを、寸でのところで俺は堪えた。
さっきからこの調子なのだ、あのバカは!
俺らが無抵抗なのをイイことに、「手をカップル繋ぎにしろ」だの「公園で愛を語らいながら散歩しろ」だの、デパートでは「彼女の服を彼が選んで、照れながら着てみるシチュエーションで!」
なんぞといい、試着室からでてきた俺をみて、黒崎が、
「ホント桜はなんでも似合うな。オマエほど可愛い服がないのが残念だけどな」
といわされ、俺が、
「もう、夏男くんたら……」
恥じらいながら言ったときにはもう、穴があったら更に深く掘って大宮を埋めたい!と思ったぞ!
本番前にすべての気力が奪われるわっ!
しかもコイツらっつーかメガネが「おもしろそうな」といって、ついてこなきゃこんなに悩まなかったのに……!
金髪は邪魔しちゃ悪いと去ろうとしてたっつうのに!!!
……しかしなぜか金髪がショック受けてたよーにみえるのは気のせいか……?
黒崎は黒崎でコイツらが一緒にいることに衝撃をうけてたよーだが(買い物に来て偶然出会ったらしい)。
……それはともかく……
「……ちょっとお手洗いに」
少しは息を抜きたい。黒崎が頷くのをみてから、二人に軽く会釈して席を離れる。
女の振りするのは別に嫌じゃねーけど、こういうのはチョットなー。
トイレからでてくるとちょうど金髪と鉢会わせた。
「――あ、早坂くん」
「さ、桜。アンタここ……!」
なぜか俺をみて、青い顔で言葉を濁す金髪。
……なんだ?
首を傾げて後ろを向いて――気付いた。
「――あ」
……しまった。
ココ、男子トイレだった……。
作品名:裏ふぁーすとでーと? 作家名:如月花菜