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おやまのポンポコリン
おやまのポンポコリン
novelistID. 129
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箱根の熱い冬

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プルシアンブルーの風が駆け抜けていく。山梨学院大学の一団だ。
 最強の留学生と言われるマトンバを花の2区に擁(よう)し、上位進出を狙っている。

 こちらからは臙脂(えんじ)にWのユニフォーム。
 早稲田大学は昨日、OBの瀬度氏が激励に来たという事ではりきっている。
 
 鉄紺のユニフォームは東洋大学。山の神を擁し、今回も優勝を狙う。
 

 12月も半ばを過ぎると、我が大学の合宿地・箱根茶寮がある、芦ノ湖周辺は急ににぎやかになる。
 それまで、北海道などで強化合宿をはかってきた各チームが仕上げの時期を迎え、現地入りしてコースに慣れさせるのだ。
 
 無論、山登りの5区を走るのは唯一人。しかし、誰もが共にコースを走り、汗を流す。
 
 彼らが走っているのを見ると我々も走りたくなってくる。
 
 だが、先日指導に来て下さった宗健先生は、常に風を感じ平常心を保てと、正座をして落ち着くように言われた。
 
 
 どこからか太鼓の音も聞こえて来る。「ちからー、ちからー、中央、中央―」
 ああ、あれは最多の優勝回数を誇る中央大学だ。
 
 と。目の前を驚異的なペースで走っていく一団があった。
 古(いにしえ)より選ばれし物だけが身にまとったといわれる紫をチームカラーにした駒沢大学だ。
 インカレ5000mで13分台の選手をズラリと並べ、今年も優勝候補と言われている。
 
 
 我慢できなくなった私は立ち上がり直訴した。
 「先生、我々も走りましょう!」
 
 だが、返ってきた千宗健先生の答えは冷たく・・・。
 
 「走るのは彼らに任せておきなさい、早苗さん私達は茶道部なんですよ。それよりも着付けをしっかり覚えなさい。帯が垂れ下がっています」だった。
 
            (おしまい)