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再会

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彼のアパートは店の裏手、歩いて1分のところにある。
オンボロ借家は未だ崩壊することなく撤去されることも無く残っていた。しかし、生活感がまったく無い。
3棟、6件の家があるのだが左右の家は雑草に覆われ、ガラスも割れ、電気メーターも止まっていた。勿論、中をのぞいてみたが人の気配はおろか、もぬけの殻だった。
残す中央の家屋。5年くらい前に1度だけ訪れた記憶ではこの中央の家屋だった気がする。

なんと、中央の1件、右の家には電気が点いている。しかし、表札には「八幡の組長」とわけのわからない文字が。ここだっただろうか? しかし表札の意味する文字が不安を掻き立てる。
ひとまず、左の家屋、電気が点いていない方も調べてみた。
全面ガラス張り2枚の引き戸の玄関は、身長をゆうに越す2メートルほどのゴミの山で埋め尽くされており、開けることはほぼ不可能な状態になっていた。
隣の部屋の窓へ向かう。窓の下には錆び付いた自転車が枯れ木に絡まって朽ち果てていた。それらを跨いで窓辺へ。
窓はボロボロになった藁の日よけによって覆われており、中はまったく見えない。
しかも、この真冬に二つある窓が両方半分ほど開いているではないか。やはり、もう住んではいないのだろうか?
店長が言う「アパート」とはどこか別に引っ越した場所なのだろうか・・・・・・。

大量の郵便物で埋め尽くされたポストを開けてみた。彼の名前がそこにはあった。やはり、場所はここで間違いない。
電話番号を紛失してしまっては呼び出す手段もない。窓を叩いて別の人が出てきても困る。第一、近隣住民に怪しまれる可能性もある。また、いつか会えるだろう。いざとなれば出勤時間に合わせて店によればよい。
諦めかけたその時だった。

「八幡の組長」が車に乗って帰ってきたのだ。

およそ自分で作ったと思われる輪留めと駐車スペースに車を止めると、組長は車の窓をあけた。すかさず声をかける。

「あの、芝田君はいますでしょうか?」

「芝田、ああ、隣にいるよ。寝てるんじゃねぇか? 窓を叩いて起こしてみなよ。もしくは電話でもかけてみな」

そういうと、組長は電気のついていた部屋に戻っていった。
やはり、家は記憶どおり、間違っていなかった。今度は躊躇なく窓を叩いてみる。

1回、

2回、

3回。

反応がない。

4回、

5回。

今度は少し強く叩いてみた。

『ガサゴソ・・・・』

「!?」

少し物音がした。さらに強く叩いてみる。

『はぁい・・・』

寝ぼけた声。彼の声だった。

「山下だよ! おーい!」

大きく声を出して自分の名前を叫んだ。

「おおっ、どうしたん、ちょっと待ってぇな」

彼はいた。一見すると人が住んでいるとは到底思えない空間に彼は住んでいた。
ゴミの山をかきわけるかのようなガサゴソという大きな音がした後、点けられた電球の明かりによって照らし出された彼のシルエットが玄関に映った。
若干の興奮と胸の高鳴りを覚え、彼の登場を待つ。しかし、この玄関からどうやって出るというのだ・・・・・・。

『ガタガタ・・・・・・』

玄関が揺れる。やはり開かない。

「ははっ!開くのかよそれ!」

笑い混じりにツッコミを入れてみた。嬉しさで声も大きくなる。

「難しいんよ、これ。っと」

『バコン!!!』

玄関のドアが外された。思わず噴き出した。
倒さないように起用にドアを持ちながら、彼が、芝田君が出てきた。そして再びドアをレールにはめる。

「久しぶりやな~」

なぜか彼は昔からずっと関西弁だ。その姿も声も語調も最後に会った時からまったく変わっていない。安心した。

「生活感ゼロだから死んでるか引っ越してるかと思ったよ」

「片付けへんからなぁ~。わはは」

スゥエット姿の彼は、この玄関の状態を見て寝ぼけ眼で笑った。

「どう?元気してるん?」

それはこっちのセリフだ。

「生存確認しなきゃ、ね。俺は事故でもしなきゃ死にゃぁせんが、君の場合は『事件』で死ぬ可能性もあるからな!」

「なんやそれぇ~」

それから1時間近く話し込んだ。近況や専門学校時代の仲間の事。そして、今ではほぼ僕にとっては興味の対象では無くなってしまったアニメやゲーム、コミックの話しをいつものように語り始めたので、それに付き合った。

年の瀬、18時。気温4℃。

「家の中は見せれんよ」とは彼の弁だが、ンなモン見たくも無い(笑)

話し込んでいるうちに手の感覚も無くなってきたので、そろそろ帰るよと告げた。

「ちょっと待ってや、土産をあげるよ」

そういうと、再び玄関ドアを外し、室内へ。律儀に再びドアを閉める。どうせ外すんだからそのままでいいのに。

「ほい、これ、今朝、店で貰ったんだけど、一人で食えねぇからさ」

そこには見慣れた箱があった。クリスマスケーキだ。消費期限が当日なので持って帰ってきたというわけだ。勿論、未開封。後乗せでイチゴが4つもついている。

「おお、マジでか!」

「ウチ、暖房器具ゼロだし、この寒さだから腐ってないと思うよ」

ありがたくいただくことにした。まさかハーレーのハンドルにクリスマスケーキをぶらさげて走ることになるとは。

最後に忘れてはいけない大事なことをして別れを告げた。

そう、失った電話番号とメールアドレスの交換。

これで彼とは再び繋がった。

バイクに乗り全国を走り、いろいろな出会いから生まれた『繋がる』事の大事さ。
手当たりしだい連絡先を交換したり交流を持ったりはしていないが、自分の人生に影響を与えた人、きっと与えるであろう大事な人達とは、やはり繋がりを持っていたい。
もしかしたら、自分という足跡を相手の胸の内に付けたいが為の自己満足かもしれない。表面ではそうは思っていないし、そんな宣言をしたこともないが、ふと客観的に「自分が何物であるのか?」とか、「自分はこれから何をしたいのか?」と、一人でキャンプをして夜空を眺めていたりしていると、思う事がある。

まだ、その答えは出ていない。答えなんて出ないかもしれない。答えを見つけて突っ走る人生も羨ましいが、ゴールの無いゴール地点を目指して走り続けるのもまた人生の醍醐味だ。走ることだけは止めたくない。そこに道があるのなら。
道路が寸断されてたら下へ降りる術を探せばいい。先に進むための後戻りならするのもありでしょう。

ネットが蔓延して人との交流が無作為に増える中、会ったこともない人からの誹謗中傷などで傷ついたなんて話しを良く耳にする、実際に僕の周りでもそんな体験談を聞いたこともある。

顔も知らない、会ったこともないひとに叩かれて凹む?

そんなの無駄だよ。無駄な体力消耗してんじゃないよ。
ネットでの繋がりをドライに受け止められないんなら止めちまえよ。
そんな薄っぺらいモンに悩む体力を他に向けろよ。

と、言いたいところだが、自分もネットでの友達はいる。
作品名:再会 作家名:山下泰文