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ツカノアラシ@万恒河沙
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薔薇の葬列

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「何故、貴方はそのことを知っているのですか?」
私は、そう聞かずにはいられなかった。理性は、聞かない方が良いと警告を発していたのにてある。好奇心は猫をも殺す。正に、その通りである。
「さて、何故でしょう。ボクは最近、思うのです。彼には最期に真実を教えるべきだったと。そうでなければ、罰にはなりませんでしょう」
そう言うと、死神は微笑を深くした。アルカイックスマイル、それを見ながら、わたしはふと目の前の美少年はもしかしたら少女なのかもしれないと思った。何故、私がそう思ったのかは自分でも解らない。所謂、カンと言うものだろうか。
そして、死神と名乗るこの人物こそ、手記の書き手が腹を切り裂き、ハラワタを弄びたかった符麗卿なのではと思った。しかし、そのことを確かめるために尋ねる勇気は私には残っていなかった。
注文していた、芳ばしい匂いがする珈琲が湯気を立ててやって来た。美味しそうな黒い液体。ただし問題は、私が珈琲を落ちついた気分で飲むことができるのだろうか、と言うことである。

さて、私が今いる現実は、本当に現実なのだろうか?どこから幻でどこが現実なのだろう?そして、本当に現実なんてものは存在しているのだろうか?そういえば、日頃からよく、金縛りに合う人に聞いた話だが、幻覚や幻聴だと解っていても実際にそれらを経験している自分の現実がどこへ行ってしまったのか解らず、金縛りになりながら思わず笑いたくなったと言っていた。そう考えながら、私は目眩のような、わけのわからない感情が胃から吐き気のように催してきたのを感じた。
そして、死神は罰は与えてないと言ったが、本当に罰を与えなかったのだろうかと私は考えた。目の前の人物は私の問いには静かに笑みを返すだけ、珈琲だけが冷えていった。
そういえば、この手記の符麗卿の殺害を彼はどのようにして書いたのだろうか。
(とくん。とくん。とくん。と…くん…)