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推理の鍵 ―殺人編―

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真実は遠い


「南城さんは何か物音とか聞かなかった?」
「特には聞かなかったけども……」
座っている南城さんは同じく座っている私の横に立っている音羽警部を時々見ながらもそう答えた。私は南城さんが見ている音羽警部を見た。
「……えっと、担当の刑事」
私は音羽警部を指差しながらもそう言うと南城さんは首を傾げた。
「蓮木さんじゃあないんですか?」
「あぁ、代わったんだよ」
南城さんは特に返事をするでもなく音羽警部を見ていた。
「部屋の入ってからの話を聞きたいんだけども」
ぼんやりしていた南城さんは少し驚いたあとに私を見ながらも顎に手を当てて考え始めた。
「メイドさんに鍵を開けて貰ってから、それから比果さんが倒れているのを見つけて。で、メイドさんに救急車と警察に……」
「それから誰かが駆けつけて来たとか」
「……使用人さんと、それから……黒畑さんが……」
最後の方になると言葉を喋る速さはゆっくりになっていった。
 ふと音羽警部が口を開いた。
「鍵が置いてあった場所とか」
「え、えっと」
いきなり音羽警部が聞いたためなのか南城さんはすごく困った表情をしていた。
「机の上に、ありました」
「他に机の上にあった物はあったかい?」
「……記憶が曖昧で、えっと小さな袋が」
南城さんは空中に横が五センチ、縦が八センチぐらいの長方形を両手で書いた。
「チャックが付いていた袋でした」
南城さんは手を止めると私と音羽警部を見た。
 音羽警部は顎に手を当てて何かを考えていたがすぐにスーツのポケットから黒い手帳を取り出して何枚もの紙をめくる。しかしその手を止めると南城さんを見た。
「……その中には何が入っていましたか?」
「何にも入って無かったと思うけども……」
歯切れの悪い言葉を聞いた私はそんな質問をした音羽警部を見た。
 音羽警部は手帳に何かを書き込んでいるようだった。
「……じゃあ、南城さん。私達、メイドさんの所行くから。時間とってごめんね」
さっさと私は部屋を出るとついて来た音羽警部が扉を閉めるのを見ると廊下を歩きながらも口を開いた。
「さっきの袋がどうかしたの?」
「……ん、あぁ。鑑識が調べた時、そんな袋は無かったんだ」
「……メイドさんに聞いてみるか」

メイドさんは軽くうねりながらも口を開いた。
「あの日は比果さんが最初に資料室の部屋の鍵を取りに来ました。
その時の様子は……いつも通りだったと思います。時間はだいたい、12時ぐらいだったと思います。
 次に資料室の鍵を取りに来たのは南城さんだったんですが、比果さんが鍵を返していなかったのでしょうがなくもう一本の鍵を持って資料室を開けに行きました。
 その、もう二本の内一本は持ち出し不可になっているので」
 椅子に座っている私、そして音羽警部と机を挟んで座っているメイドさんは椅子から立ち上がると壁に何十本と掛けられているうちの一本のウォード錠の鍵を手に持った。
「鍵は名前が書いてあるわけではないんですね」
「……はい」
メイドさんは私の質問に恐る恐る答えながらも机の上に資料室のウォード錠の鍵を置いた。
 二つめの質問を私は口にした。
「部屋の鍵は確かに閉まっていたんですね」
「はい」
「……机の上を見ましたか?」
三つめの質問を私が口にするとメイドさんは再び軽くうねる。
「机の上ですか。……すみません。見てないです」
メイドさんは軽く頭を下げた。
 私は音羽警部を見ると手帳に何かを書き込んでいた。
「比果さんと南城さん以外に鍵を取りに行った人はいませんでしたか?」
「はい」
私は次の五つめの質問をする。
「そこの鍵、見てもいいですか?」
私は壁に掛けられている何十本の鍵を指差した。
「どうぞ。――あっ、すみません。電話です」
 メイドさんは隣の部屋から聞こえてくる無機質な音に気がつくと軽く頭を下げて隣の部屋に消えていった。
「さて、メイドさんがいなくなったし。音羽警部気がついたことは?」
「特になし。むしろ内部犯の可能性が高まった」
私は椅子から立ち上がると壁に掛けられている何十本とある鍵に近づいた。
「これはパッと見てもどれかわからないわ」
「みたいだな」
 音羽警部は手帳をスーツのポケットに戻すと椅子から立ち上がり、私に近づいて、何十本とある鍵を見た。
「メイドの目を盗んでこの鍵を手に入れるのは難しいからこの鍵は使ってないだろうな」
「そうかもね」
音羽警部の言葉に適当に相槌を打っているとさっきメイドさんが入って行った部屋の扉が開いた。
「すみません。お待たせしました」
私と音羽警部は振り返るとメイドさんを見た。
「いえ、いいですよ。こちらの質問は以上なんで」
軽く頭を下げると私と音羽警部は部屋を出た。