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文芸部での活動まとめ

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夏祭りの夜の夢




   
照りつける太陽、身体中にまとわりつく湿気の感覚。全身から汗が噴出し必死に体温調整を行おうとするが、特に大差はない。いや、ちゃんと機能しているのだろうが実感はない、と言ったところだろうか。
 そんなまさしく日本の夏、とも言うべき気候を感じながら少年――園原一樹は家に帰るまでの道で自転車をこいでいた。
「……あちー」
 思わず口から出る夏の定例文。
「もう、夏なんだから暑いのは当たり前じゃない。わざわざ言わないでよ一樹」
 すぐ横から声をかけられ、一樹はすぐ近くを走る少女に視線を向ける。
「別にいいだろ小春。言わないとやってらんねえんだよ」
「言ったら余計に暑くなるじゃないの」
「大して変わんねえよ」
 一樹は少女に小春と呼びかけ、その言葉に反論する。
「まあまあ、そんなことしてたらもっと暑くなるよ」
 二人の会話に割って入ったのは、一樹とは雰囲気の違うおとなしそうな少年だ。
「じゃあなんか涼しくなるようなこと言ってくれよ健太」
「え? えっとじゃあそこの山の中にある洞窟に……」
「閉じ込められた妖怪の話? 前にも聞いたわよ」
 健太と呼ばれたおとなしそうな少年は、小春の言葉にえへへと笑いを返す。
 彼らのこの会話は夏のたびにずっと繰り返されてきたものだ。
 人口の少ないこの島では同学年の友人というのは貴重なもので、小さな頃から三人はいつも一緒にいた。
 この一連の会話をしたのは一度や二度のことではない。
「はぁ、それにしても今年の夏ももう終わりかあ」
 ふと小春がため息をつきそんなことを言った。
「明日の夏祭りが終われば秋まですぐだもんねえ」
 この島の夏祭りは八月の下旬に行われ、ちょうど夏の終わりを告げる重要な行事だ。
「なんだか寂しいなあ」
 健太が呟く。
「そうよねー、この島で暮らす最後の夏だもんね」
 この島には一応中学校はあるもの高等学校以上の学校はない。そのためこの島の子供たちのほとんどは中学卒業と同時に島を出る。中学三年生の彼らは来年の春にはこの島にいない。
「別に夏休みになればこっちに戻ってこれるだろ。そんな寂しがらなくても」
 高等学校に進学するつもりでいる小春、健太と違い漁師の家を継ぐつもりの一樹はこの島を出ない。
 そのせいか二人みたいに寂しいという感情はなかった。
 もちろん気軽に会えなくなるは一樹も寂しい。ただ、二人と違って故郷を離れない分楽観的になれているというだけだ。
「そーだけどやっぱりなんか……」
 やはり生まれ育った故郷を離れるのが不安なのか健太は少し暗い顔をしている。
「……ま! 考えてもしょーがないしね。それより山辺さんのとこに明日やる花火買いに行こうよ!」

 場の空気を払拭させるように小春の明るき声が響く。
「お、賛成! 今年はネズミ花火大量にやろうぜ!」

 すかさず一樹はその言葉に乗った。ため息しながら話すより、笑いながら明日ために行動するほうがずっといい。
「えー! 嫌だよー」
 健太が不満の声出す。もちろんネズミ花火の部分に対してだ。
「なんでだよ面白いじゃんか」
「だって火傷しそうで怖いよ……」
「大丈夫だって! ほらとっとと行こうぜ」
 そう言って一樹は自転車の速度を上げた。一気に坂を下っていく。
「あ、ちょっと待ってよ!」
「置いてかないでー」
 小春と健太も急いで一樹の後に続いた。



 次の日。
 島のみんなが待ち望んだ夏祭りの日だ。
「一樹ー! 早く降りてきなさいよー!」
「わりぃ! ちょっと待ってくれ!」
 まだ日が沈みかけてもいない時間に小春と健太は一樹の家を訪ねていた。
 理由は簡単、夏祭りの準備をするためだ。
 島の住人が一丸となってする夏祭りに大人も子供も関係なく、動ける人間は全員参加だ。
「ごめん。手間取った」
「もうなにやってるのよ」
「ってかお前ら来るの早いんだよ!」
「一樹が遅いのよ!」
「まあまあ」
 口喧嘩をする二人を止める健太。いつもの光景である。
「でー今年なにするんだっけ」
「屋台のテント建てるのよ」
「うわめんどそう」
 話ながら三人は広場への道を歩いていく。
「島の外に行って帰ってこない人もいるから僕達のとこまで力仕事が回って来るんだよ」
 健太がどことなく暗い表情でそう言った。
「まーた考えてんのか? まだ先なんだしいいじゃねえか」
「うん……そうなんだけどね……」
 そう言っても健太の表情は暗いままだった。


 夏祭りは大成功だった。
 一樹たちも屋台の食べ物や盆踊りを楽しんだ。
 健太もそのころにはいつもの明るい表情に戻っていてみんなと祭りを楽しんでいた。
 そして彼らは今一樹の家で花火大会をしているとこだった。
「よし、じゃあこんどは三個いっぺんに……」
「あ、危ないよ! やめとこうよ!」
「大丈夫だって」
「悪ノリはやめなさいよ一樹!」
 一樹の提案でそれはのんびり穏やかな花火ではなく火傷寸前のネズミ花火大会と化していたが……。
「もう、もうちょっとゆっくりやろうよー」
 たまらず健太が文句を言う。
 一樹と違って健太はどちらかと言えばゆっくりと眺める花火のほうが好きなのだ。
「ちぇ、しゃーねーなー」
 一樹はしぶしぶ普通の花火を手に取る。
「でももう残り少ないよ」
 まだ使ってない花火を見て小春が言う。
 残っているのは一樹が買い占めたネズミ花火ばかりで普通の花火はあと三本ぐらいしかなかった。
「……ネズミ花火しかないね」
「じゃあ最後に一人一本ずつやって終わるか。そろそろ母さんがスイカ切ってるころだろうし」
「そうね、これで終わりにしましょう」
 三人がそろぞれの花火を手に取る。
「じゃあ同時につけようぜ」
「あ、危なくない?」
「向きさえ気をつけりゃ大丈夫だって」
「じゃあ行くよ? いっせーのーで」
 三人で蝋燭の炎の中に花火を入れる。少しのタイムラグはあるもののほぼ同時に三人の花火に火が点いた。
 花火は光りを散らし燃え続ける。
「これで今年の夏も終わるな」
 燃え続けた花火はしだいに手元の方へ上っていく。もちろんそれが手まで届くことはない。
「……うん、終わる」



◆       ◆       ◆



照りつける太陽、身体中にまとわりつく湿気の感覚。全身から汗が噴出し必死に体温調整を行おうとするが、特に大差はない。いや、ちゃんと機能しているのだろうが実感はない、と言ったところだろうか。
「……あちー」
 思わず口から出る夏の定例文。
「もう、夏なんだから暑いのは当たり前じゃない。わざわざ言わないでよ一樹」
 一樹はすぐ近くを走る小春に視線を向ける。
「別にいいだろ小春。言わないとやってらんねえんだよ」
「言ったら余計に暑くなるじゃないの」
「大して変わんねえよ」
 一樹は小春の言葉にそう反論した。
「まあまあ、そんなことしてたらもっと暑くなるよ」
 二人の会話に割って入ったのは、健太だ。
「じゃあなんか涼しくなるようなこと言ってくれよ健太」
「え? えっとじゃあ森の中にある洞窟に……」
「閉じ込められた妖怪の話? 前にも聞いたわよ」
 健太は、小春の言葉にえへへと笑いを返す。
作品名:文芸部での活動まとめ 作家名:悠蓮