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神王ラーリスと魔王クラーゼスのRP

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「あの、ちょっといいですか?」
不意に呼び止められる。
呼び止められた男はカスク・ノーマル。年のころ20。これから街を出て城に向かい、王国の騎士団に入隊の試験を受けに行く途中である。
呼び止めた女はカスクと同じ年頃で、白髪のショートカット、白い法衣を着ている。法衣にしては腰のスリットがきわどいのが気になる。
「何か用ですか?」
「あなた、カスク・ノーマルさんですよね?」
いきなり見ず知らずの女がカスクの名前を知っている。
カスクは別に大した特徴もなく評判もあるわけでもなし、言ってしまえばこれから騎士Aか、試験の結果によっては兵士Aにしかならない。
「私は、ラーリスと言います。実は私も城へ行くんですけど、ご一緒させてもらえませんか?」
「?、なんでそんなこと知ってるんだ?」
カスクはひどく怪しいと思った。
「ええとですね、あなたのお母さんが近所の人と話しているのを聞いたんです。私ひとりでは心細かったので、誰かとパーティを組んで行こうと思ったんですけど、護衛を雇って行こうにも持ち合わせがそんなにないので、同行させてもらえないかと」
図々しいが、カスクも騎士団に入ろうという位。護衛のひとつもこなせないわけにはいかないので。
「ああ、わかった。ただし一緒に行くだけだからな、宿代なんかは自分で払ってくれよ」
「はい、ありがとうございます」
ラーリスは笑顔で答えた。


城までは徒歩で約5日。
城までの行程は途中に幾つもの村などがあるので野宿の心配はない。
無論、街や村の外にはモンスターが徘徊している場合もあるので、戦える者は必要になる。
カスクはロングソードと皮鎧。ふつーの装備である。
ラーリスは素手、回復魔法が使えるとか。
1日目はモンスターと遭遇することなく村に着き、宿を取り夕食になる。

「んで、ラーリスは何で城に向かってんだ?」
しばらくしてカスクが質問する。
「目的ですか?・・・占いに出てたんですよ」
「占い?」
「はい、今日街を出て城に向かうようにと」
「・・・ちょっと待った。決めたのって、今日?」
「はい、それでちょうどカスクさんが城に向かうと聞いていたので」
「・・・占いだけで行くとこを決めてんのか?」
「いえ、そうじゃないんですけど、たまたま今朝占いをしたらそうなったんです」
そう言うとラーリスはタロットカードを取り出すと、カスクにその絵を見せる。全て違う絵柄のカードが40枚位ある。ラーリスはそれをシャッフルする。
6枚を円になるように置き、真中に1枚置く。
ラーリスが目を閉じてなにかつぶやくと7枚のカードが鈍く光る。
やがて光が収まり、
「カスクさん、全部めくってもらえますか?」
カスクは真ん中のカードをめくる。
城のカード。
次に手前のカード、
運命のカード。
奥のカード、
運命のカード。
「?」
カスクは違和感を感じながら次のカードをめくる。
運命のカード。
残り3枚もすべて運命のカードだった。
「なあ、これって手品か?」
ラーリスは首を振ると、
「いえ、この占いに手品は必要ありません」
そう言いながらカードを集めてもう一度シャッフルした後にカスクに見せると、すべて違うカードだった。
「・・・・どういうことだ?」
「私にも分かりません、ただ、[城に向かうのは運命である]ということです」
どうにも納得がいかず考え込むカスク。
「カスクさん、後で話したいことがあるので部屋で待っていてください」
ラーリスはそう言うと食堂を出て行った。


カスクは部屋で待っていた。
先ほどの不可解なカード占い。
今日1日の行動で、変わった奴であるが、別に変な宗教をやっているわけでもない。
僧侶見習。そんな感じである。
そんなことを考えているとドアがノックされた。
「カスクさん、入りますよ」
ラーリスはそう言うと部屋に入ってきた。
ラーリスは法衣を脱いだ軽装だった。
カスクはベッドに座っている状態で、ラーリスは部屋にあった椅子を持ってきて座った。
ラーリスは真剣な表情で、
「カスクさん、落ち着いて聞いてくださいね」
「お、おう」
かなり真剣な感じが受けられ、カスクはとまどう。
「実は私・・・」

「神なんです」

その時、凄まじい轟音とともに目の前が赤く染まった。
「なっ!?」
正確にはラーリスの座っている椅子のすぐ後ろが炎の壁になっている。
ラーリスは立ち上がり後ろを向く。
「もう来ましたか」
そう言うとふうと息を吐く。
炎の壁は一瞬にして消え去る。
「って?え?」
カスクは分けがわからず言葉にならない。
恐る恐るラーリスの側まで行き見てみると村がなくなっていた。
外は暗いが、家々の灯が無くなっている。
ラーリスは空に浮いている人影を見ていた。
突然突風が吹き、カスクは目を覆う。
「一体・・・何だ?」
カスクが次に目を開けると、
巨体があった。
4メートルはあろうかの紫の肌、3つの目、鋭い牙、何かの模様がある漆黒のマント。
かなりの威圧感がある。
ラーリスは平然としていた。
「あなたが来たのですか、魔王クラーゼス」
「な、なに!魔王!?」
黄金の瞳をしたものは答える。
「ほう、我を知っているのか、先ほど我の魔法を防いだのはお前か」
クラーゼスはラーリスの方を見て、
「・・・天の使いといったところか、まあいい、
おとなしくその人間を渡してもらおう」
クラーゼスは右手を出し、差し出すよう促す。
「なぜ、あなたに引き渡さなくてはならないんです?」
「その[運命の人間]を渡せと言っているのだ、そんなものが人や神族の手にあるわけにはいかぬ、世界を統べるのは魔族なのだからな」
「運命の・・・?」
カスクはつぶやく。
「やれやれ、魔族もこのことを知ってしまいましたか」
ラーリスは平然と言う。
ラーリスは右手で止める様にクラーゼスの方に手を向けると、
「魔王クラーゼス。ここは神王ラーリスの名のもとに退いてもらえませんか?」
「何?貴様が?」
クラーゼスは目を細めてラーリスを見る。
「・・・・・貴様が神王であるか、あるいは唯の虚勢か・・・」
クラーゼスは右手を天にかざす。
「確かめてみっっっ!」
ドッッ
カスクが見たのはラーリスが拳を打ち放った姿だけ。
魔王の姿が見えなくなった。
遠くを見ると山が吹き飛んでいるのがわかる。
「さて・・・と」
ラーリスは手首の感触を確かめてから、カスクの方を向く。
「ではカスクさん、私が神王であることを教えてきますから、この宿から出ないでくださいね。結界がはってありますから」
ラーリスは笑顔で言ってから、床を蹴ると山の方に飛んでいった。

ラーリスが崩れた山の上に来ると、クラーゼスはまだ埋まったままだった。
次の瞬間。ラーリスの目の前に現れる。
「貴様・・・」
「神の言うことは聞いてみるものですよ」
ラーリスを睨みつけると、魔力を集中させる。
魔王が両手を突き出すと、
『魔王(サー)重力集(ギシュタ)功弾(ルド)』
魔王の前に巨大な黒球が現れ、ラーリスを飲み込む。
雲が吸い込まれ、大地が球状に捲れていく。
瞬間に、巨大な黒球の周りに光が無数に現れる。
「!」
ゴウッ
黒球の中心から壕風が吹き荒れ、雲が吹き飛び、土が地面に叩きつけられる。
『 神(ゴッド) 雷(ヴォルト) 』