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律姫 -ritsuki-
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novelistID. 8669
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夢見る明日より 確かないまを

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司と行田先輩が付き合い始めたという噂を聞いた。
クラスのテニス部の友達、青山翔からの情報だった。

「俺、昨日さ、6組の松下と生徒会長の行田先輩の会話、きいちゃってさあ。それが大変なんだよ。大ニュースだぜ」
定例会があった次の日だった。
「テニス部の昼練が終わって急いで教室に戻ろうとしたら、チャリ置き場の裏の花壇で二人が話してたんだよ。なんか雰囲気悪そうって思って黙って通り過ぎようとしたんだけどさ・・・」
司が逃げるようにして生徒会室を出て行った後。
行田先輩がその後を追って行った。
自分は、また一歩出遅れた。
司に必要な言葉をかけててやることができるのは、いつも俺じゃない。

「松下が『行田先輩と付き合います』って言ってるのバッチリ聞いたんだ」
「・・・ウソだろ?」
そういいながら、それがウソじゃないことが一番よく分かってるのは俺だったと思う。
「本当だって!仲良いんだから本人に聞いてみろよ」

司に必要な言葉をかけることができるのは、きっと行田先輩だったんだ。
あの二人が付き合い始めたことが、何よりの証拠。

司が選んだのは行田先輩。
それは、わからないでもなかった。
誰にも何も負けたことのない司が、行田先輩のことだけは認めてた。
あの人のいうことには何でも素直に従ってたし、尊敬してるのもわかった。
もちろんそんな司をみるのは初めて。
その時点で十分あの人は特別だった。

「松下って結構人気あるみたいだけど、あの生徒会長相手に文句言える人間はいないだろうなあ」

その言葉が耳に痛い。

「岡本は何も聞いてないのか?」
「ああ、俺は何も」
「生徒会ってあの2人とお前の3人だろ?やりづらくないか?」
自分にとって、その事実はそういう問題じゃない・・・そう言いたい気持ちを抑えて、必死に平静を装いながら返事をする。
「・・・まあ、でも俺に隠してくつもりなんじゃないかと思うけど」
「えっ、ってことは俺は結構まずい情報をお前に教えちゃったのか!?」
「いや、教えてくれてよかったよ。こういうのって後々知るほうがショックだろ」
「そりゃそうだけど・・・」
その言葉を聞きながら、半年前の記憶がよみがえった。
池野雅実。彼女と付き合ってることを一週間司にいえないまま過ぎた。
あの時、司は『幼馴染が隠し事してるってほど悲しいこともないよね?』といった気がする。

「知ってた方がいろいろ便宜はかってやれるし、あの二人はもともと俺に気を使いすぎてるくらいだよ」
「そうか、それならまあ・・・」
「いろんなほとぼりが冷めたら、俺にも自分から言ってくれると思うけど」
「んー・・・そっかあ?俺は時間が過ぎればすぎるほどいいづらくなってくと思うけどな」
「そういうものか?」
「まあ、人それぞれだろうからな。岡本って松下と仲いいだろ?いつも一緒に朝練時間に登校してるし、帰りも一緒に帰ってるし」
「まあ・・家が向かいだからな」
「え、そうなの?」
「あれ、言ってなかったか?俺と司は幼馴染で幼稚園に入る前から一緒に遊んでるって」
「へえ、それは初耳。なんだ、俺はホントは二人が付き合ってるんじゃないかと思ってたんだけどなあ。この前の張り紙もあながちウソじゃないって気もしてたけど」
「俺と司が付き合ってるって?」
「そう」
「まさか、ただ幼馴染なだけだ」
自分の言葉に自分で傷つくなんて、我ながらばかばかしいと思う。
「そっか、まあ生徒会長と松下のことは何か進展あったら俺にも教えてくれよ」
青山が自分の席へと戻っていった。

司と、行田先輩が・・・付き合い始めた。
なんだか、事実だと認識はしているのに、夢の中の出来事のようで、うまく飲み込めなかった。