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さかきち@万恒河沙
さかきち@万恒河沙
novelistID. 1404
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Light And Darkness

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 そして義貴とともに、ドアを開けて暗い廊下に顔を出したとき。
 けたたましいまでの非常ベルが、病院の夜を震撼させた。


 激しく鐘を乱打するような非常ベルの音が、響き渡っている。
 悠弥と義貴はそっと廊下にでて、怪訝に思って眉根を寄せることになった。
 そこは相変わらず薄気味悪い闇で、静かだったのだ。ただ、非常ベルが激しく必死にがなりたてているだけだった。かなり騒々しい。
 なのに、だれも出てこない。病室に寝ているであろう患者も看護婦も、警備員すらも姿を見せない。まるで……そこに、白い不気味な建物に閉じ込められたのがふたりだけであるかのような、そんな錯覚をおぼえずにはいられなかった。
 頭の中に、不快な不協和音が響き渡った。
 悠弥はドアを閉め、松葉杖を突いて廊下にでた。これがまた糞忌々しい……動きを拘束する。
 義貴が、それに続く。
「大伴さん、危ないですよ!」
 振り返りざま、ベルの音にかき消されないように怒鳴ると、義貴が負けじと叫び返した。
「それはこっちの台詞ですよ! お互いさまでしょう!」
 耳が麻痺しそうなほどきつい音。思わず歯を食いしばり、耳を塞ごうとしたときだった。
 ふいに、非常ベルの音が途絶えた。
 しん、とした静寂が刹那のうちに再びあたりを満たす。
 ふたりはびくりとして壁に背中を押しつけるように、身をひいた。
 辺りを見回しても……状況に変化はない。目は、暗さになれてきて、常夜灯や非常口を示す明りが照らし出すあたりが、少し明るく見えてきた。誰もいまさっきの騒動に気づいた様子はない。
 どういうことだ、これは。
 悠弥は警戒心を強くして、あたりに神経を尖らせた。何者かが、この病院内にいることは確かなことだった。さっきの悲鳴は、おそらく看護婦。『何か』があって、手にした懐中電灯か何かを取り落としたのだろう。悠弥は見落としている気配はないか、と探る。
 そのとき――音が、聞こえた。
「高崎君、……!」
 囁くような義貴の声に、悠弥は頷いた。
「あれは、例の……」
 音の源を探り当てようと足早に歩き出した悠弥のあとを、義貴が慌てておってくる。悠弥は振り返ったが舌打ちしただけで止めなかった。たいがい年上の人間は、年下と思われる人間を庇護しようとし、義務を感じる。止めても聞かないから、何かがあったときには自分が保護してやればいいとは思うのだが。