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さかきち@万恒河沙
さかきち@万恒河沙
novelistID. 1404
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Light And Darkness

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ACT,1





 地獄のような、悪夢を見る。


 まただ……また、いつもの夢だ。
 高崎悠弥は、ひりつく喉の奥に何か不快な塊を飲み下だしながらそう思っていた。酷い悪夢……出口のない、迷路。そう、これはどうしようもない過ぎ去ってしまった刻の記憶だ。
 生温い闇の褥。漂う空気は澱み、風もなく、吐き気を催すような息苦しい何かの匂いに満ちていた。はらはらと、静かに音もなく降りつもる薄紅色のあれは……花びら。陰暗に仄白く、浮かび上がるのはひどく齢を重ねた桜の樹木だ。けれど咲き誇る花は、あふれる生命力に満ちている。  毒々しいくらいに。 指先が不自然に温かい粘液に滑って、悠弥は顔を上げた。
 身につけるのは、死装束ともいうべき白い着物。それが、みるみる……みるみる真紅に染まり出して、やっと指先に滑るそれが血であることに気がつく。この堪え難い匂いは、命を宿すことをやめた鮮血の匂いなのだ。
 では、命を失ったのは……?
 悠弥は我に返った。己の躯が、ひとりの少女を組み敷いている。
 少女は裸体で四肢には少しの力も込められていなかった。弛緩しきった肉体は手足を投げ出している。のけ反ったおとがいのあたりがまだてらてらひかる真っ赤なものに濡れ、その少女はとっくに果てていた。舌を自ら噛み切ったのだろう  そして少しずつ、少しずつ、体温を失いつつある。
 そこにあるのは、骸だ。
「あ………ああっ……」
 唇から、醜い呻きが洩れた。
 その刹那、自分が何をしでかしたのか  何ということをしてしまったのか、悟らざるを得なかった。悠弥は、血に染まった両手で頬を覆い、その光景すべてを否定しようとかむりを振った。
「あ……ひ……っ」
 瞬きもできなかった。逸らすことができなかった。
 喉の奥、嘔吐感のようにこみあげてくるどす黒い物を感じて、悠弥は必死に目を瞑った。
 ――なんということだろう……!
 瞼の奥に、閃光のような鈍痛を感じた。熱い痛みと真紅に塗れ出す世界。胸に打ち込まれた楔が、血に染まる。あふれた真っ赤な液体に汚れ、鈍くくすんだ光を放ち。
 灼ける。
 絶叫を迸らせる唇が、己の者ではないような感覚。他人ごとのように、己の口から迸り続ける醜悪な悲鳴を聞くのだ。
 地獄のような悪夢。喪失感。胸に虚無の穴が空く――。
 叶わぬ想い届かぬ最愛の少女……組み