小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

15分のエピローグ

INDEX|1ページ/1ページ|

 


―ガラガラッ


「……先生、いる?」
「…、あれ?一体どうしたんだい、こんな時間に。」
「ちょっと、質問があるんです。」
「……。」

―カタン…


「…どうぞ。」
「ありがとう。…あの、聞きたいことがあるの。」
「僕が答えられることなら、なんなりと。」
「……先生は、“好き”と“愛してる”の違いって、何かわかる?」
「………。……これはまた、面白い質問だね。何かあったの?」
「いいから!…先生は、それを教えてくれればいいの。」
「…。好き、と、愛してる、の違いか。」
「………。」
「人によって基準は様々だと思うけど…」
「私は、先生の答えが知りたい。」
「………そう、だね…。」

―ギシ…

「…僕が思う好き、は自己完結で……愛してるは、奉仕、もしくは相互作用だと思ってる。」
「自己完結…?奉仕?」
「好きは、ただ自分の気持ちを向けるだけ、自己満足とも言うかもしれない。相手の気持ちを考えず、ただ自分の感情を押しつけることだと思う。」
「そんな…っ」
「うん、納得出来ない気持ちもわかるよ。でも君は、僕の答えが欲しいんでしょ?」
「……っ……。」
「……あるところに、男の子がいました。彼は、同級生の女の子が大好きでした。彼女とは、一番の親友でした。でも彼は、いつしかそれに耐えられなくなりました。」
「……。」
「彼は、女の子に想いを伝えました。でも女の子には他に好きな人がいて、彼の気持ちを受け入れる事が出来ませんでした。男の子は、ショックで彼女の側に居られなくなりました。彼女はとても悲しみました。何故なら、彼女は一番の親友を失ってしまったからです。」
「…………。」
「………確かに、彼は女の子の事が好きだったんだろう。でも、果たしてそれは愛だったのかな?」
「………それは…。」
「この中で、一番傷付いたのは誰だと思う?」
「………女の子…?」
「どうしてそう思ったの?」
「だって…多分思ってもみなかった事だから…。男の子は、自分の気持ちを知って、挑戦したけど…。」
「…彼は、想いを伝えて確かに納得したよ。でも、彼は傷付けてはいけない人を傷付けた。自分のエゴのために…。」
「………好き、だったから…。」
「そう。好きだったから……愛していなかったから。」
「…。」
「彼女を愛していれば、傷付けたくないと思えば、できないことだよ。」
「それが……奉仕?」
「そうだね、とはいっても」
「?」
「これは僕の答えだから、あまり参考にはしないでね。」
「ど、どうして?」
「それは、」

―キーンコーンカーンコーン……

「おっと時間だ…、…行かなくていいのかい?」
「…まだ、大丈夫。……あの、もう一つ質問してもいい?」
「……。………どうぞ。」
「………先生、…先生は、……好きなひと、いる?」
「いるよ。」
「……っ……!」
「君たち、生徒だよ。」
「え……。」
「僕は教師だから、生徒が一番好きだよ。」
「そ……そうなんだ……。」
「………納得、できない?」
「…そんな、ことは……。」
「ウソはいけないよ。」
「…………………。……………………。」
「……理由、知りたい?」
「……………、うん……しりたい…………教えて…?」
「…。…知ってるかな、教師って人間じゃないんだよ?」
「え!?」
「教師は、“教師”という名前のイキモノなんだ。教師は、“生徒”というイキモノを教え導き守る為に、それだけの為に存在している。」
「…!」
「そして教師は、生徒を好きになるように…生徒は教師を好きになるようにできている。義務づけられている、といってもいいかもね。」
「…でも、そうじゃない人もいるんじゃ」
「何事にもイレギュラーは存在するからね。原則として、だよ。」
「………。」
「……教師はみんな生徒が“好き”だよ。でもそれは生徒の意志は関係ない、教師達の勝手な使命感や、義務感、責任感によるものだ。」
「……責任感……。」
「それに、お給料を貰ってるしね。」
「…あ。」
「いくら、そんな打算的な気持ちではないと言い張っても、所詮仕事。生きるための糧は手許に転がり込んでくる。どんなに足掻いてもそれは同じ、教師である限りね。」
「じゃあ先生は、生徒を愛さないの?」
「愛せないんだよ。…決して。」
「ずっと?」
「そう、ずっと。」
「………。」
「でも、それは生徒である限りだよ。」
「生徒じゃなくなったら、違うの?」
「……さあ、少なくとも今まではそんなことは無かったね。」
「………。」
「…………君が、ココに来た本当の理由はなんだい?」
「…………、……わからなく、なっちゃった…。」
「………。」
「わかってるつもりだったのに…今の話を聞いたら、わからなくなったの。」
「…そう。」
「でも、このままわからないままなのは、嫌…。」
「………答えが欲しい?」
「欲しい。」
「それなら……あと2時間、待ってごらん。」
「2時間?」
「そう、2時間。…その時には、君の望む“答え”があるよ。」


―…ガタン


「…その時の僕は、君を好きじゃなくなっている筈から。」
「っそれって……!!」
「さ、今はここまで。そろそろ行かないと式に遅刻するよ?」
「あ…っ、は、はい!」

―パタパタ…ぴた


「……先生。」
「ん?」


「……私、先生のこと……ずっと、好きでした。」


―ガラガラ…ぱたん






「…愛するが故に、自分の想いを封じ込める。」

所詮、それも綺麗事。全ての人がその綺麗事を全うできるなら、この理不尽で残酷な熱が人間の心に巣くう筈はない。

穏やかな優しさなどいらない。
ただこの身を焦がす狂気が欲しい。

それも…紛う事なきもう一つの“真実”である。

「……僕も、君のことが好き“だった”よ。」

―……キーンコーンカーンコーン……



「…卒業おめでとう。…そして、初めまして。」



作品名:15分のエピローグ 作家名:jing