小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

晒し

INDEX|1ページ/1ページ|

 
「ガン!」
(あいたーやってしまった・・・)
バックミラーを覗きぶつかったなにかを確認し車を停め少しバックする
さっきぶつかった何かを見に行くと鳩だった
動かないことを確認し車のフロントバンパーを確認した
車に傷はついていなかったものの血がほんのり残っていた
(祟られても嫌だしうちのラッキーのお墓の隣に埋めてあげようか)
まさあきはポケットティッシュに雀をつつみ帰路に着いた
(ごめんな。供養するから祟らないでくれよ)
少しばかり土を掘り、雀を埋めビールのつまみのピーナッツを添えた

まさあきは普段はなにもしていないニートだったが気は優しい人間で近所の評判も良いほうだった。ただ面倒臭がりで定職に就いてはすぐ辞めの繰り返しをしていた
しかしただ単にニートなわけではなく本人も自分の人生については考えたりもしていた
いつものように昼過ぎに起きては自己嫌悪に陥ったりもしていた
両親は公務員で妹とは看護師だったため猶更自分という人間が嫌になっていた
不良というほどではなかったが中学から酒、タバコを好み高校になると無免許でバイクを乗っていた
自動車の免許はちゃんと取得し高校を卒業する頃には落ち着いたがまっとうな人生を送ってないまさあきは大人になると自分の存在の是非について考えることが多くなりやがてうつ病になり通院をするようになった
周囲からは普通に見えるが陰では自傷行為をしたり自殺願望や消えてしまいたいと考えていた
通院3か月ほどの今は少し落ち着いてきて前より家族間の会話は増えてはいたがやはり自分の存在に否定的ではあった

「赤の20番の方第二診察室へどうぞ」
予約していた精神科へ来ていた
あたりさわりのない会話をし、いつものように5分程で診察を終え薬をもらい途中鳥の糞を落とされながら帰路に着いた

うつ病になってから特に何かをやるという気力が湧かずなんとなく生活しテレビを見てご飯を食べて風呂に入ってとまあ普通にはしていた

しかし「うつ病は気持ちが弱いからだ!」という母から言わせればこの現状に我慢ができず世間体を考えると恥ずかしいと時折癇癪を起こす
ただ自分ではどうにもできない気持ちの現状が辛かったが父と妹の配慮がありなんとか生きてはいた

まさあきにも少ないながら友人がいてたまの気分転換にと友人2人とゴルフの打ちっぱなしに行こうということになり運転途中また鳥の糞をかけられながら友人と
「きったねー」
「いや運がついていかったじゃん!」
等とはしゃぎながら運転していた
2日連続で鳥の糞を落とされたのだが昨日のことは忘れていた

フリータイムになったばかりだからお客さんもまばらで3人並んで席が取れた
「100ヤードに3回乗せてビリがみんなにジュース」
といつもの遊びをしたり他愛もない話をして帰りにご飯を食べて充実した気持ちでその日は寝床についた
特に帰り際に
「うつ病なんて現代病ていうくらいみんななってたりするからそんなに気にする事ないって。お母さんみたいに理解のない人はまあほっとけばいいよ。気にしたら悪化するかもしれないしさ」
という何気ない言葉が嬉しかった

翌日は天気がよくちょっと気分が良かったのでハローワークに行こうと思い車に乗ろうとした
白の車なのであまり目立たないがやけに鳥の糞が着いており明らかに昨日落とされた量以上でボンネットから屋根からガラスにもベタベタと着いている
(もしかしてこの前鳩を殺したから呪いなのか)
ちょっと嫌な気分になったまさあきはとりあえず車を洗いホームセンターで鳥のエサを買い改めて供養した
車の運転をしてなにかあったら嫌だなと思いその日はいつも通り自宅に籠っていた

「起きて!!」
今日妹は夜勤だったかなと思い起きるとなぜか目の前に鳩がいた
「おわっ!」
妹がいなく鳩がいる現状が理解できなかったがもっと理解できないことが起きた
「おはようご機嫌はいかが」
鳩がしゃべった
嘴が動きはっきりと人間の言葉をしゃべっている
(あー夢かと思い)
夢からさめようとしたがどうも夢じゃない
かといってテレビ番組のようなドッキリを俺に仕掛ける人も理由もない
「おはよう」
ととりあえず言ってみた
「私のことを覚えているかしら」
「すいませんよくわかりません」
「私はこの前あなたにひかれたの」
あーと思い出してみたもののそれでも現状を理解できるわけもない
「理解できないのも無理はないわ。実際私も最初理解できなかったけど多分あんたみたいな駄目人間にひかれて悔いがあったから生き返ったのかもね」
(生き返った?悔いがあったら生き返れるものなのか。というか生き返ったんなら元の所に帰ればいいと思うんだけど・・・)
「それでなんでここにいるんですか?」
「どうやら生き返ったていうのより霊体みたいなの。それで成仏ができない理由があんたみたいな駄目人間に殺されたからだからあんたがまっとうな人間になったら成仏できるんじゃないかと思って手助けをしようと思って」
(よく話がわからないけど駄目人間言い過ぎなんじゃね?)
「まあ私のというか鳩の力をあなたに貸すからさっさとまっとうな人間になって成仏させてね」
段々と目が覚めてきてようやくトリックとドッキリでなく現実ということが理解できてきた
「で鳩の力ってどんなのですか?」
「簡単よ。空を飛べるということと鳥類の言葉がわかるようになるわ。これだけの力があればまっとうな人間になるなんて簡単でしょ」
(いやいや人間離れしすぎてむしろまっとうじゃない気がするんだけど・・・でもテレビでて大儲け・・・いや空なんか飛んだらある意味俺の人生終わるだろう・・・)
「言いたいことはわかりました。要はあなたが納得するような正しい人間になればいいんですね」
「そういうこと」
「わかりました。とりあえずこの部屋からはでないでくれますか?家族に見つかったらやっかいなんで」
「私は霊体だからあなたに以外に見えないから大丈夫よ。あとそれとため口でいいわ」
「あーオッケー。それと俺はまさあきって名前だけどなんて呼べばいいの?」
「パーコって呼んで」
「オーケー」
この日からちょっと奇妙な同居人が増えた
作品名:晒し 作家名:まさあき