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秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
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トゥプラス

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妖狐


 元はただの狐であった。それがいつしか大妖怪琥珀と言われるまでになったのだ。
 遥か昔、琥珀がまだ普通の狐であった頃。琥珀は普通の狐ではあったが、その毛の色は周りの者がいわゆる狐色なのに対して、琥珀は白銀であった。
 白銀の琥珀は周りの狐たちから仲間外れにされることもあったが、琥珀の母だけは他の兄弟たちと変わらぬように琥珀を育てた。
 ある日、琥珀は空腹に耐えかねて人里に下りたことがあった。
 人里には恐い人間が住んでいるので決していってはいけないと母狐に言われたことがあった。しかし、今はその母狐も猟師に弓矢で射抜かれ死んでしまい、どこかに連れていかれてしまった。その光景を木々の間から隠れて見ていた琥珀は決して人間と関わっていけないと思った。
 人里に下りて帰って来た仲間もたくさんいる。その仲間はご馳走を持ち帰って来た。しかし、大半の仲間は重症を負わされて命からがら逃げて来たり、一生帰って来ないことがほとんどだった。
 それでも琥珀は食料を求め山を下りて人里に向かった。
 里に住む者たちは貧しい農民ばかりだ。
 都では豪華な屋敷に住む貴族たちがいるが、地方の小さな里に住んでいる人々の家は現代では家と呼べない物がほとんどだった。
 家の形は円錐で、その基礎は木でできているが、その表面は泥や草などでできている。原始時代のような家だが、下層の人々の家はこれが当たり前だった。
 文化の伝達が遅いので都と地方では格差が大きくできてしまうのだ。
 里に着いた琥珀はびくびくしながら、人間に見つからないように散策を始めた。
 里に来たのは今回が初めてのことだったので、どこに行ったいいのか、どこに何があるのかわからない。
 物陰や草むらに隠れながら移動するが、食糧となるものは何も見つからなかった。この里も食糧不足に悩んでいたのだ。
 琥珀はさっと草むらに隠れた。人間の足音が聴こえたのだ。
 人間は琥珀に気づかず、すぐ横を通り過ぎていってしまった。きっと見つかっていたら毛皮を剥がされ肉を食われていたに違いない。
 安堵感で琥珀はほっと肩を撫で下ろした。こんなにも近くで人間を見たのは初めてのことだった。
 山でも猟師は見たことはあったが、それは遠くからだ。近づいたら殺されてしまう。
 琥珀は再び里の中を歩き始めた。そして、ついに目当ての食料を見つけた。