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秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
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トゥプラス

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 不快な顔をして尊は未空の顔をゆっくりと見た。すると今度は未空がゆっくりと少女の肩に手を乗せた。するとどうだろう、今度はちゃんと少女の肩に手が乗ったではないか!? いったい何が起きたのか――手がすり抜けたのは幻だったのだろうか。
 未空は少女の顔を覗き込むようにして、やさしい笑顔で聞いた。
「名前はなんていうの?」
 泣いていた少女はゆっくりと目から手を離し上目遣いで、
「……椛」
 と言うとすぐに視線を落とした。
「あなたは何?」
「…………」
 未空の質問に少女は戸惑い視線を深く下げた。
 未空の質問はもちろん名前は聞いているのではない。名前ならもう聞いた――未空が尋ねているのは、人間ではない少女に対して何者であるかということだ。彼女は完全に少女が人間でないことを確信したのだ。
 少女は首を横に振る。
「……わからないの。椛[モミジ]はね、椛って名前とお兄ちゃんを探してたことしか覚えてないの」
 ただの迷子ではなく、記憶喪失でもあるらしい。しかも、未空は人間ではないと思っている。本格的にただ事ではないようだ。
 腕組みをする尊と、また何もせずにただ立っている未空。そして、再び泣き出した少女のもとにある人物が近づいてきた。
「どうしたんですか月夜霊さん、星川さん。この子泣いているみたいですけど?」
 この場に居合わせたのは買い物袋を両手に持った葵城悠樹だった。制服のまま夕食の材料を買って家に帰るところでちょうど未空たちと出くわしたのだ。
「この子記憶喪失みたいなんだ」
「それと人間じゃない」
 二人の言葉に悠樹は心底戸惑った。記憶喪失だというだけでも大事だと思うのに、未空の口からは確かに『人間じゃない』と聴こえた。
 目の前で泣いている少女を人間じゃないと紹介されたら普通は戸惑うし、悠樹はそういう話は信じない。目の前の少女が幽霊だと誰に言われても信じないし、超高性能ロボットだと言われてもきっと信じない。悠樹は一般的に認知しがたい事柄に関しては一切信用しないのだ。
「人間じゃないってどういうことでしょうか?」
「人間外の存在ってこと」
 こんなことを未空に言われても困るだけだ。悠樹は助けを求めるようにして尊に顔を向けた。
「月夜霊さんもそう思っているんですか?」
「未空がそう言うなら、そうなんだきっと……」