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赤い瞳で悪魔は笑う(仮題) ep2.姉妹

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 始業式の、終わったその日。新しい教室、新しいクラスメート、そして「新しい」担任。
 俺は三年に進級したわけだが、同じクラスだった『友人』も多く、また大して変り映えのしない毎日が続くのだろうと、ぼんやり考えていた。
「えー、新しくみんなの担任教師となる、桜見亜入(おうみ あいり)だ。よろしくなー」
 にゃはは、と笑いながら、桜見先生は自己紹介中。黒板に大きな丸文字で自分の名前を書き、
「良いかー、私の名前は、よく間違われるんだが、『愛梨』なんて可愛らしい名前ではない。『亜』に『入』であ・い・り・だ。そんでもって。私は、自分の名前を間違われるのがものすごく嫌いなんだ。今まで私の名前を間違えた人間は、一人残らずぎったぎったにしてやった。というわけで――」
 派手な豹柄のミニスカートに真っ赤なシャツ、上には黒のジャケットという、教師であるとは信じられないようなスタイルの桜見先生は、黒板に『愛』の字を書いて、勢い良くばん、と叩いた。チョークの白い粉が舞う。
「もし少しでも私の名前の字を間違えようものなら……、痛い目見るから、気をつけろ。以上だ」
 ぱんぱんと手に付いた粉をはらい、桜見先生は話を切り上げた。生徒たちは皆、その余りの迫力に気圧されてしまい、何の反応も返さなかった。
 あー……、また、桜見先生か……。
 心の中で、俺はため息をついた。一、二年生の時も、俺の担任は桜見先生だったのだ。それにしても、まさか三年連続で同じ自己紹介を聞かされることになるとは。
 ありゃ、相当の面倒くさがりだな……。
「それじゃあ、私についての質問等は面倒だからパス。とっとと皆の自己紹介を済ませちゃうよ」
 その一言で、皆、一斉にどよめく。……分かっていたくせに。
『えー私、何話そう』『特技なんてねーしなぁ』『お前、野球好きじゃん。それ言えよ』『えー緊張するよ?』『何も考えてなかったなあ』『急だしなー』等々。
 皆、口々にそんなことを連発する。どうせ考えてきていたくせに。
「じゃ、出席番号一番から」
 言われて、順々に自己紹介を始める生徒たち。直に、俺の番が回ってきた。……面倒なことだ。
 立ち上がって、できるだけ普通の生徒らしく振舞って見せるしかないか。
――更衣雨夜(さらい あまや)です。趣味は読書、好きな教科は国語。桜見先生クラスは三年目になるので、何か困ったことがあれば俺に聞いてください。
 少しの笑いが起きる。桜見先生はふん、と鼻を鳴らして、次の生徒へ移っていく。どうでも良いクラスメート達の、どうでも良い自己紹介。
 俺はろくに、聞いてもいなかった。