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Virus

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第一章 『終焉』



206×年、人類の最後は惨憺たるものだった。
核戦争による破滅ではなかった。

原理は体内でヒト染色体を介して抗体をつくるもので、それは人体だけに作用するがんワクチンとなる。
だがそのプロジェクトには盲点があった。
それは、人以外の生物にはその働きがみられず、ウィルスに感染するとそこからがんを発病してしまうものであった。
がんの完全治療法が確立されたその20年後だった。

ヒトゲノムプロジェクトによる遺伝子治療が進んだ末に開発されたワクチン、
体内で生殖した感染力のあるがん抗体ウィルスは、地球上に生息する人間以外の生物すべてを襲った。
進化ウィルスの拡散によるがん感染は鼠算式に急速に拡がっていき、さらに勢力を増しながら拡大していった。
もはやそれを阻止する手立てなど毛頭なく、ことは極めて難しく深刻な様相へと陥ってゆくのだった。

では、強靭な感染力を持っていたそれに対して、国際保健機関はなぜそれに気がつかなかったのか?

それは潜伏期が長すぎていたからである。
約20年の潜伏期だったのだ。
その間に動植物すべての子孫たちにまで蔓延してしまっていた。
人以外のすべての動植物同士で感染が拡がり続けた。
みな、がんになって死に絶えていった。
国際保健機関は「フェーズ終焉レベルだ」などと声明するほかがなかった。

クジラをはじめ、貝やクラゲ、珊瑚やプランクトン、微生物にいたるまですべての海の全生物が次々と絶滅していった。
中でも陸上に棲む動物たちは絶滅がもっとも早かった。
無論昆虫も死に絶えていったがゴキブリたちは最後に残った。
次いで地上の全植物たちも枯れゆく運命にあった。

もはや残存生物と成り果てた人類には食べられるものはほとんどなくなってしまった。
残された選択肢はただひとつ、共食いの道を生きていくしかないのであった。

国際倫理委員会は最後の最後まで反対、抵抗をしていたのだが、
凶行してきた反倫理組織の手によって皆殺され、彼らの食肉になってしまった。
それからというもの組織の手は益々野蛮さを増していった。
警察も、軍の指導者さえもその組織のリーダーと手を組んで暴君と化し政府を牛耳ってしまったのだ。
そして食肉のターゲットになりうる人選政策、「ホロ人コースト」と名づけて、それを実行した。

その内訳はこうである。

・50歳以上に達した場合安楽死。
・その他の死についても即冷凍保存し、政府公認の解体業者の手で処分 を敢行する。
・逃亡者については射殺を許可する。
・上の通報者については60歳まで生きられる許可を与える。



…地獄の沙汰さえもこんなにヒドイ所ではなかった。
そんなに怖ろしい社会が実際に訪れてしまったのだ。
こんな世を、一体誰が予想できたのだろうか。

国内の自殺者は年間30万人以上に上った。
彼らも冷凍され、食肉にされていった。。。
作品名:Virus 作家名:ひろくん