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せき あゆみ
せき あゆみ
novelistID. 105
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死体は嗤う

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 風呂場に全裸の死体が転がっている。
 男二人と女一人、それを見つめて話し合っている。

男A 「なんでこんなのがここにあるんだ?」
男B 「しらないよ。」
女C 「殺したのはわたしじゃないわ」
男A 「とにかく、このままじゃまずい」
男B 「かたづけなくちゃ。でも、おれはいやだ」
女C 「男のくせに何言ってるのよ。あんたたちがやってよ」
男A 「男だからって、いやなものはいやだ」
女C 「か弱い女のわたしにやらせるなんて言語道断よ」
男たち「誰がか弱いって?」
女C 「何よ。失礼ね!」 

 三人は死体を誰が片付けるかでもめていた。三人とも身に覚えがない。
 しかし、風呂場には全裸の死体が……。それは紛れもない事実だった。

男B 「でも、おれが殺した訳じゃないし」
男A 「それならおれだって何もしてない」
女C 「じゃあ、なんでこんなところで死んでるのよ」
男たち「知らないよ」
女C 「わたしも知らないわよ」

 女、眉をひそめて死体を見る。突っ伏して横たわっている死体は男か女かわからない。
 二人の男はいやがって死体のそばに近寄らない。
 そのまま死体は二日間放置された。

女C 「もういいかげん片付けないと、腐っちゃうわ」
男たち「だから、おれたちはいやだってば」
女C 「わたしだっていやなんだから」

 女は半べそをかいている。
 かつてしたいやな思いが浮かんできたのである。
 そのときの手の感触がよみがえってきて、頭を抱えた。

 死体を一瞥すると、まるでそれは女をあざ笑うかのようにぬれて光っている。

女C 「ふん。馬鹿にしないでよ」

 女は意を決し、死体に立ち向かうことにした。
 女は死体に手を伸ばした。




 その手に握られているのは……




 割り箸。





 女は死体を割り箸でつまむと、窓を開け放ち、死体を外へ放り出した。
 すると、男たちは拍手して喜んだ。

男たち「わ〜〜い。ありがとう。お母さん。ほんとに気持ち悪かったね」
女C 「何言ってるのよ。ふたりともヘタレなんだから。触るのもいやなのよね。ナメクジって」
作品名:死体は嗤う 作家名:せき あゆみ