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正夢をみていた

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夢を拒絶した日


これは夢だ、というのが感覚でわかるようになってきていた。
時々、今が夢なのか現実で竜ヶ峰を助けているのかわからなくなりそうな時もあったけど、もうそんなこともない。
何しろ俺の夢では、俺自身は動けない。ひたすらに竜ヶ峰が危険にあうところを見るだけなんだから、夢か現実かなんて考えりゃわかることだ。

だから俺は、ただ、ただ、ひたすらに、ひたすらに、延々と、目の前の情景を見つめ続けるしかなかった。


『愛してる愛してる愛してる、ねぇ愛してるよ、だから君も俺を愛するべきだ、愛するべきだよ帝人君』
『ひっ、ぁ、やぁ・・っ、だ・・っぅ、やめっ』
『好きだよ、好き好き好きだぁいすき、すき、ずっと好き、君が好き、愛してる、愛してる』
『やだぁっ、やめて・・・っ、ぅぐっ』
『きもちいい?そうだよねぇ、気持ちいいよね、だって愛してるから。君も俺を愛してるから、ね、すきだよ、大好きだよ。だからほらもっと』
『ぉ・・ぁがっ、は、げほ・・っ、ひ、ゃ・・・た、すけ、し・・・ぉさ、しず、』
『ひとつになろう?帝人君、俺と君がひとつになるんだ。愛してる、大好き、すき。誰よりも君が君だけが君だけを!!』

『ぃやぁぁぁぁあああっ!!!』
「うあぁぁああっ!!!」


竜ヶ峰の空間を切り裂くほどの絶叫と、俺の声が重なる。
カッと目を開けば、見慣れた天井が見えた。

どっどっど、と心臓が爆発しそうなほどの勢いで鳴り響いている。俺の全身を冷や汗が包み込んで、感じたことがないほどに体が重かった。
上半身を起こせばギシリとベッドが嫌な音をたてたけど、そんなことは気にならなかった。
それ以上に、心臓の音が全身に伝わっている。


「りゅうがみね・・・」

ぽつりと名前をつぶやくと、瞼の裏にさっきまで見ていた(見させられていた)夢が映る。
あそこがどこかなんてわからない。普通のベッドがある、普通の寝室のようだったことしか。
ただ、そこにいたのは信じられない、信じたくない姿。

「いざや・・・っ!!」

竜ヶ峰を押さえつけて笑う嗤うあいつの顔。厭らしく上がった口角に細められた目。溢れだすのは気持ちが悪いほどの愛・愛・愛!!

(あんなのが愛だなんて、そんな馬鹿なことがあるか!!)

あの幼く小さな体を曝け出して、一握りすれば折れてしまいそうな手首に銀色の輪、ナイフで切られた細い傷跡からは血が滲みだしていて、大きな綺麗な瞳からはボロボロと涙を零して頬が赤く濡れていた。
無理やりに広げられた足、その間にあるあいつの、臨也の・・・っ!!

ガァンッと壁を殴りつければ、家が小さく揺れる。穴の開いた壁なんてどうだっていい。
最後の理性が働いて、トムさんに仕事を休みたいと電話だけは入れることができた。
俺の押し殺しきれていない怒りに気付いてくれたのか、あっさりと休むことが許される。本当にトムさんには感謝してもしきれない。
汗に濡れて冷たくなった服を脱ぎ棄てて、バーテン服に身を通す。幽からもらった大事な服だけど、この1着だけはどうしても汚してしまうこととを心の中で詫びておく。
今日だけは、これだけは、譲るわけにはいかない。

絶対なんてない、絶対に助ける、なんてできない。そう思っていた。
だけど、『絶対に助けなければいけない』時はある。


(絶対に、今日は絶対に・・・・・殺す、殺す殺す、殺す殺す殺す、殺してやるっ!!絶対に殺してやる!!!)

作品名:正夢をみていた 作家名:ジグ