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正夢をみていた

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夢を見る日


道の真ん中に餓鬼どもが群がっている。
1人の少年を囲むようにして、口汚く金を要求している姿。イラついて自分のこめかみに青筋がぴきぴきと浮かぶ音がする。
人よりも俺は背がちょっとばかし高いから、人垣の外側にいる俺の顔が見えたのか、中心で金をせびられていた少年が嬉しそうに笑う顔がよく見えた。

「あ?何笑ってんだよてめぇ、ほら、金だしな」
「すみません、いつもご迷惑を・・・」

竜ヶ峰が俺に向かって言った言葉に、周りにいたやつらが不思議そうにこっちを振り返った。
そして顔を引きつらせて逃げようとするそいつらの頭を引っ掴んで、空へ投げてやる。

(ま、死にはしねぇだろ)

パンパンと服の汚れを払っている竜ヶ峰の頭を撫でると、眉を下げて「すみません」とお決まりのセリフを告げる。
もうこのセリフを聞くのも何回目だろうか。

「いつもありがとうございます。なんだか本当にすごい遭遇率ですよね」
「俺としては、お前がそれだけ絡まれてるほうがすげぇと思うんだけどな」


あれから、竜ヶ峰が轢かれそうになったのを助けてから・・いや、竜ヶ峰が轢かれる夢を見てから、俺は何度も何度も竜ヶ峰の夢を見ていた。
色っぽいものでもなく、健全なものでもなく、竜ヶ峰が危険な目に合う夢ばかりを見続けている。

最初はこういう不良どもに囲まれているところだった。逃げ切れずに殴られ蹴られているシーンを、俺の夢だというのに目を閉じることもできず助けに行くこともできず、ひたすら見つめ続けるだけの夢。
誰かは知らねぇが俺にこんな夢を見せてるやつ(神様ってやつか?それとも俺にこういう能力があるってのか?)の悪趣味さを思い知って反吐が出そうだった。
夢から覚めた俺は速攻で家を飛び出して竜ヶ峰のもとへ向かい、そしてまさかの通学途中で絡まれている――夢と同じシーンを目撃した。
当然、夢とは違いすぐに助けに入ったから、あんな風に殴られ蹴られているところを見ずにすんだ。
もしこの小さな(と言ったら怒るだろうが)少年が怪我をするなんて、そんな理不尽が許されるものか。

それから何日かに一回、竜ヶ峰の夢を見た。
コケて擦り傷を負ってるところであったり、階段から足を滑らせて頭を打ったり、子ども遊びに巻き込まれて水鉄砲で全身びしょ濡れになったり、ちょっとした不幸にあっているシーンばっかりだった。

街で遭遇したときにそれとなく聞いてみたら、本当に夢で見たことがすべて竜ヶ峰の身に起きていた。
「どうしてそんなこと聞くんですか?」と一度たずねられたけど、俺は「お前の夢を見てる」とは言い出しづらかった。
セルティの友人でもあるんだし、こういう不思議系は好きかもしれないが、知り合いに「お前の夢を見てる」と言われたらちょっとどころじゃなく引くだろう。
せっかく俺と話してくれる貴重なやつなんだ、ドン引きされて失うのはリスクが高すぎる。
だから俺は夢の話はしないで、たまたま危ない時に遭遇する率が高い知り合い、という立場をとることにした。
幸い俺の力があれば、竜ヶ峰をある程度の危険から守ることができる。今日みたいな人的被害にあっているときは特に。

(この力が、役立つことがある・・・この力で、誰かを、竜ヶ峰を助けられる)

そう思えば、今まで疫病神のように思っていたこの力も、なんだかマシなもののように感じるから不思議だ。
竜ヶ峰と関わると、知らなかった感覚をいろいろ感じることができた。

作品名:正夢をみていた 作家名:ジグ