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いつも 日曜日

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いつもの時間に目覚まし時計が鳴る。形だけの目覚まし時計。いつもより少しだけ遅い時間に設定したけど、特に予定は無いからすぐに止めてまた夢の中。夢?ふと思う。最近は夢を見ていないなあ、と。ただただ布団に埋もれて、体の奥底から湧き出る眠気に身を任せることが心地良くて、そうしているだけ。別にいけないことをしてるわけじゃない、ただ疲れているだけなんだ。少し寝たら頭もすっきりして今日を過ごす元気が生れてくるはず………………はずだった。そう、少し寝るだけで良かったのに。気が付いたらそこは自分の部屋だけど、自分の部屋じゃなかった。何かがはっきりと欠けていた。寝てたはずなのに起きていた。夢の中とは思えないほど意識ははっきりとし、冴えてるとは言い難いけれど、目も鼻も口も手も足も確かな感覚があった。それはちょうど頭が重くて眠いけれど、まだ寝るような時間では無いからぼーっとしてる時のような感覚。でもいつもと何かが違う。あ、そうか。時間がないんだ。そこには時間という要素がなかった。時計は動いているけど、そいつには時を刻むという役割は全く無いみたいで、いつもなら地球が休むことなくまわって、誰もかもがみんな自分の人生をその人なりに送って、それが私に否応なしに関わってくる。そんな感覚、そんな気配。そういうものが一切なかった。匂いも無い。無臭だ。鼻がつまっているときとは別の、本当に無臭な世界。初めての感覚。ワンルームのマンションの、唯一の大きな窓から入ってくる光は朝日なのか夕陽なのか区別がつかないような淡いのっぺりとしたオレンジ色で、少しも変化する兆しを見せない。この世界には「時間」も「気配」も一切なかった。……一体私はどうしてしまったのだろう。―――夢の狭間―――そんな言葉がぴったりと当てはまるような、ぽっかりとした空間だった。六畳一間の部屋をくるりと歩いてみた。トイレを覗いてみた。冷蔵庫を開けてみた。いつもと全部一緒のようで、全部何かが少しずつ、はっきりと違う世界。なんだって起りうる。例えそれが意図した結果であろうと、無かろうと。私はいつもの世界に飽きていたかもしれないし、そうじゃないかもしれない。何だって起りうる。起ったことが全てで、それが私にとっての「今」になる。おかしなことじゃないよ。それがこの世界生きるってことだから。
作品名:いつも 日曜日 作家名:伊藤嘉晃