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凡人の非日常

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「一体これからどこ行くんですか?」
電車に揺られながら聞いてみる。先生は答えてくれるだろうか。
「実は見たい映画あって。」
「さっきも言いましたけど俺、お金持ってきてませんよ?」
「奢る、奢る。可愛い生徒の為だもん。俺だってそれくらいするよ。」
他の生徒とも出掛けたりするんだろうか。当たり前か。俺なんかと行くぐらいだから他のめっちゃ可愛い女子とかとも一緒に行くんだろうな。モテ男はいいねぇ。
「流石、先生。」
先生と可愛い女子が出掛けているのを想像したらなんだかイラついてきたから、適当に言い放った。
「でしょ。」
適当に言った意味無し。
「あ、ここで降りるよ。」
「あ、はい。」
ここの駅の周りはビルやデパートが一杯あるためいつでも人が多い。
いつも来てます的にサクサク歩いていく先生の後ろをただ付いていくのが俺には精一杯だった。
「大丈夫?」
心配してる様子なく笑顔で言う。
「思ってもないこと言わないで下さい。」
「思ってるよ、多分。」
この人、俺のことからかってる…。
「ここだよ。」
駅から少し歩いたところの映画館で先生は止まった。
「もう少しで着くとか言って下さいよ。急すぎます。」
心で思ってる思いをそのまま言った。
「聞いてこなかったから。」
「確かにそうですけど…。」
「でしょ。」
俺の顔を見ながら笑う。
「先生の彼女って大変そうですね。」
「ん?何か言った?」
なんて性能の良い耳をもってるんだ、この人は。
「何観るんですか?」
「ん?秘密。」
意味がわからない…。
何を思っても通用しないと思った俺はチケットを買ってくる先生を待った。
「ポップコーンとか食べる?」
「先生が決めてくださいよ。先生の金なんだから。」
「たまには君の話も聞いてあげようかなぁと思って。」
ニコッと笑みを浮かべる。
「自覚あったんですか。」
「飲み物何が良い?」
話題の切り替え早っ…。別に良いけど。なれたし。
「じゃあ、カルピスで。」
「くっ…可愛いね。」
先生…笑い押し殺してる。
「カルピスのどこが可愛いんですか?」
本気で先生がわかんない…。
「いやぁ高校生の男子がカルピスは可愛いよ。しかもソーダじゃなくてノーマルって所がもっと可愛い。」
「俺的には先生がカルピスを飲んでるって方が意外性あると思います。」
「じゃあ、俺もカルピスにしよ!!」
なんでそうなるんだ。
「自分の飲みたい物頼んでくださいよ!」
「うん、もちろん。なんか久しぶりに名前聞いたら飲みたくなったんだよ。」
「あっそ。」
気まぐれだ、ホントに。
「あっ二人で一個でいい?中身同じだし、L頼むから。」
「え…先生が良いならどうぞ。」
まさかこうなるとは思ってもみなかった。別に男同士だから照れも何もないんだけど。

最終的にポップコーンを買わなかったらしく、飲み物一つ持って指定された席に着く。俺はまだこれから何を観るのか知らない。
「トイレとか平気?」
「さっき先生が飲み物とポップコーン買ってきてる間に行ってきたんで大丈夫です。」
「流石。」
「思ってないくせにそんなこと。」
「今回は思ったよ。」
「今回はってなんですか。」
「鋭いな、鈴木君は。」
そんな言い合いをしてるうちに辺りは暗くなった。
「怖くなったら、僕の手、握っていいからね。」
「え…ホラー系何ですか?」
「ホラー系、苦手?」
別に苦手ではないけど、得意でもない。出来れば、観たくない。
「べっ別に平気です。」
「動揺してる。」
ギクッ
「してないです!!」
「鈴木君、可愛い!」
「可愛いって男に向かって言うもんじゃありませんよ。」
「可愛いもんは可愛いんだから仕方ないじゃん。」
意味わかんない…。
だんだんと周りが暗くなり、色々なCMが始まる。
ヤバい…眠い…。
まだ本編に入ってもないのに寝るわけにいかない。
そう思っていたのにいつの間にか、僕は寝てしまった。
「ぉーい、おーい、鈴木君?」
はっ!!
寝てしまった!!しかももうエンディング!!
「あまりにも気持ち良さそうに寝てたからそのままにしちゃったんだけど、もっと早く起こした方が良かったかな?」
「…」
「おーい」
「平気です。」
「そう。」
一体何の映画だったんだろぅ。
「あっそうそう!!いびきかいてたよ。」
「え!!嘘!?!?」
先生の方を見る。表情は暗くてあんまわかんないけど。
「う・そ」
先生が俺の耳元で囁く。
あまりにも綺麗な声で。
なぜか俺は顔が赤くなる。
男に囁かれただけで。
暗くて良かった。きっと俺は今動揺して変な顔してる。
「あんまからかわないで下さいよ。」
今言える精一杯の言葉。
「ごめん、ごめん。」
絶対思ってない。
周りが明るくなり、映画を見ていた人達がたつ。
「さぁ行こうか。」
「あ、はい。」
「次はどこに行くんですか?」
「このカルピス飲みきってくれない?」
相変わらず、話を聞かない…。
カルピスを受け取ってみると、半分位残ってた。もしかして、残してくれたのか?
「もう、お腹に入んなくて。」
そうだよね、あの先生が俺のために残してくれるわけない。
俺はカルピスを一気に飲みほした。
先生との間接キス……クラスの女子に知られたら殺されるな、絶対。

作品名:凡人の非日常 作家名:アメ