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ツカノアラシ@万恒河沙
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ぐらん・ぎにょーる

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その言葉に『少年探偵』は、にこにこ笑うと背後の小さい扉を指差した。どうやら、二人に扉に入れと言いたいしい。何となく厭な予感がしたが、宝石の誘惑には勝てずに、あれよあれよと言う間に、何故か二人は書斎の奥の小さな扉に入る事になってしまった。
ミイラ取りがミイラになるとはこういう事を言うのだろう。
小さな扉の中の部屋には、ピンクと青に占領されていた。フランスの写真に出てくるような可愛らしい子ども部屋だった。きゃあ、きゃあ、きゃあ。姿の見えない子どもが走って来た。姿の見えない子どもは、二人に纏わりつくと拳銃を奪って、次の間へ走って行ってしまった。二人は顔を見合わせると、姿の見えない子どもを追いかける。鬼さん、こちら。手の鳴るほうへ。
今日のお献立その一、『スープ』血のように真っ赤なスープ。
次の間は、寝室。床には、白墨で人型が書かれていた。まるで殺人事件の現場のようである。寝台の上には、理科室にあるような大きな壜。何故、こんなところに壜があるのだろうか。目が点になる。
壜の中はみるみる内に真っ赤な液体で満たされていく。それに伴い、何となく二人の顔から血の気が引いていったように見えるのは気のせいだろうか。
今日のお献立その二、『前菜』強盗の腕肉のサラダ仕立て。
姿の見えない子どもは、嬌声を上げながら二人の周りを走り回る。ふと、二人気がつく。いつのまにか、自分たちの片腕がない事を。喉の奥から絞りだすような悲鳴。いつ、どこでなくなったのだろうか。二人に思い当たる節はない。普通、腕がなくなって気がつかないと言うことがあるわけもない。
二人は、こけつまろびつ、寝室から走り出た。何かがおかしい。ここから、逃げなくていけない。二人は大慌てで逃げ場を探す。廊下には先ほどはなかった階段があった。二人は後先考えずに、渡りに船とばかりに階段を下りた。いったいぜんたい、どこに出口があるだろうか。因みに、階段がいきなり現れるなんて、どう考えても罠としか考えられないのですが。
今日のお献立その三、『メイン』強盗のステーキ、オレンジソース添え。
階段を下りると、そこはバベルの図書館のような書斎だった。左右には、白い扉があった。片一方の扉には、『食堂』と書かれた札が掛かっていた。扉の向こうからは、楽しそうな声がする。
「早くおいでよ、めいんでぃしゅ、めいんでっしゅ、いらしませー」
強盗達は、ようやく自分達の置かれた状況が解ったらしい。二人は声にならない悲鳴をあげて、われ先に『食堂』ではない扉へと突進する。扉を開け放つ。そこには、凶悪な顔をした白兎と黒兎がいた。二羽は、手に持ったナイフとフォークを頭上に上げ二人に向かってにたりと笑ってみせた。口の中は真っ赤かっか。
「めーし、めーし、めーし」
「めーし、めーし、めーし」
今日のお献立その四、『デザート』強盗のシャーベット、頭蓋骨の入れ物入り。
佐藤と塩野の表現の難しいこの世の物とは思われない悲鳴が長く響き渡る。その悲鳴はいつまでも消えないかのようにだった。
そして、ディナーはおしまい。
白兎と黒兎はご機嫌。おなか一杯。大満足です。今日も美味しく戴きました。因みに、白兎と黒兎の口元には、赤いものがべっとりと付いていたのは、言うまでもない。
その頃、どこかの書斎ではくすくす笑う声。
「すっかり堪能しているようでございますね」
悲鳴が始まった事に気づき、巽が顔をあげた。優しげだがどことなく意地の悪そうな笑みを浮かべた。
「そのようだね。全く、姉さんったら。自分のペットの食料ぐらい、ヒトに頼らないで自分で調達して欲しいですよね」
どこか遠くで聞こえる悲鳴を聞きながら、『少年探偵』はにっこり笑いながら言う。しかし、どこかしら楽しそうに見えて仕方がない。それにしても、こんなに回りくどい方法でわざわざ入手するようなものだったのだろうか。謎である。もしかしたら、ただの趣味なのかもしれない。そして、どんちゃん騒ぎの惨劇の夜はどんどん更けていったのであった。とんてんからりん・しゃん。