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いつまでも、君が怖い理由

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「じゅーだいめ!おはようございますっ!」

「うん、おはよう獄寺くん」

ぱたっ、ぱたっ…

「………………」

「十代目?」

俺の顔を見ると尻尾をパタパタと揺らしながら駆け寄ってくる獄寺くん。
目を輝かせて、耳をピンっとさせる仕草は犬好きの俺にとってたまらないものがある。

(触ってみたいなぁ)

そうっと手を伸ばすと、獄寺くんは不思議そうに首を傾げて"十代目?"と、君しか呼ばない俺の名前を口にした。

ぴたり、と手が止まる。
そうだ、獄寺くんは俺の友達じゃないんだ…俺は、その友達だって思ってても…あくまで、ボスと部下のつもりで。それなのに、馴れ馴れしく触っていいのだろうか、そう思うと同時に、手が動かなくなった。

「……十代目?どこかお加減でも悪いんですか?」

「――ううん。大丈夫。それより、その耳どうしたの?」

あくまでなんて事無いように聞いてみれば、獄寺くんはそれこそ意味がわからないように首を傾げた。

「耳…っすか?別になんともないですけど…?」

「ううん、そっちじゃなくて。こっちのモコモコの耳の方なんだけど…」

獄寺くんが触れるのは、頬の近くにある耳で。
いや、俺が言ってるのはこっちの耳だよ。という意味で、頭の上の耳に触れ――ようと思ったのだが、悔しい事に俺の今の身長では獄寺くんの頭の上に手は届かない。

「…ね、ちょっと屈んでくれる?」

「? これでいいっすか?」

「うん」

そろそろと手を伸ばし、獄寺くんのふわもこの耳に触れてみる。

(わっ、ふわふわで…気持ち良い)

「……っ、わ、…え、なんすか、十代…め……」

「え?」

そのふわふわした感覚がもっと欲しくて撫でていたんだけど、気付けば獄寺くんは顔を真っ赤にしている。そして、俺の手が撫でているのは――獄寺くんの、髪の毛で…。

「わぁ!ご、ごめん、獄寺くん!!」

耳に触れるついでに頭を撫でてしまったんだ。なんて事を…!そう思いながらも、さらさらな触り心地に、獄寺くんは髪でさえ俺とは違うんだな、と考えてしまう。

「っ、いえ…!いいんす。十代目に撫でて頂けるなど、俺はなんて光栄な部下なんでしょう…!!」

「あ…」

やっぱり"部下"
俺は、嫌だな。獄寺くんとボスと部下、それだけなんてすごく嫌だ。

「あの…その、違うんだ…。実は俺―――」

リボーンの言葉を思い出す。
獄寺くんの耳と尻尾。誰も何も言わないなんておかしい事くらい、本当はもう気付いていた。



本当はただ、こうして獄寺くんに触れたかっただけなのかもしれない。

作品名:いつまでも、君が怖い理由 作家名:サキ