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いつまでも、君が怖い理由

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「十代目ー!帰りましょう」

「…うん。帰ろっか」

「ハイ!」

にこにこと笑う君からは、俺が感じていた葛藤だとかそう言ったモノは全く感じられない。いつも通りの帰り道を二人で歩きながら、俺の中には悶々とした考えが溜まっていく。
俺は、獄寺くんに犬の耳が見えた時には、もう大変だったんだけどなぁ。触りたくて、撫でたくて、我慢するのが大変だった。ねぇ、君は?君は俺を見て、そうやって悩んだりしないのかな?

「…じゅーだいめ?」

「獄寺くんはさ…コレ、撫でたいとか思わないの?」

"コレ"で、恐らく猫ミミがある部分を指さしてみる。
獄寺くんは沈黙した後「そんな、恐れ多い事考えてないっす…!…その、ちょっとしか」と最後にポツリと零した。それが嬉しくって、俺の中を渦巻いていた気持ちがスゥっと晴れていく。

「そっか」

「はい。……あの、十代目」

「ん?なーに?」

獄寺くんの視線が、自分の腕と俺の顔を交互に見つめる。
まるで困ったようなそれに、もう一度「なに?」と尋ねてみる事にした。

「…あの、ですね。その…十代目の尻尾が俺の腕を撫でてるんス。ちょっとばかしその…くすぐったくて」

「えっ?! ご、ごめん!!」

慌てて獄寺くんから離れたけれど、これで尻尾まで外れたかはよく分からない。
てゆーか、なにしてるの!俺の尻尾!!

「いえ、すみません。なんか…その、照れちまいまして…」

「へ…?」

獄寺くんの顔が赤い。
釣られて俺の顔も、なんだか赤くなってくる気がする。

「…えっと、その…。動物に懐かれるなんて、初めてなんで…照れくさいといいますか。いえ!決して十代目の事をそこらの猫と同じように思っているわけではないんですが…!!」

あわあわと謝罪する獄寺くんが、可愛くて。
俺の顔には、自然と笑みが浮かんでいた。

「せっかく俺が猫みたいになってるんだしさ。好きに触っていいんだよ?」

俺も、沢山触らせてもらったし。と付け加える。

「あ、ありがとうございます…。勿体ないお言葉ですが、その…」

口ごもる獄寺くんに、俺は当たり前の事を今更思い出した。

「そ、そうだよね…。男が猫ミミとか、気持ち悪いだけだよね。ハハ…俺、何言ってんだろ。ごめん、獄寺く「そんな事ありません!」

割って入った言葉に驚いていると、獄寺くんは大声を出した事を詫びてから、おずおずとこう言った。

「あの…。マジで、すげー可愛いです」

「……っ!」

獄寺くんはどうかしてる
こんなセリフをさらっと言えるなんて。


「じゃあ、獄寺くんの家行ってもいい?その、宿題も出たし…あと、また…撫でて欲しい」


こんな事を言う俺も、どうかしているのだろうけど。

作品名:いつまでも、君が怖い理由 作家名:サキ