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わたしと会さん

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わたし達の仕事は、少なくとも4時間は立ちっぱなしで、始終せかせか歩き回っている。慣れればなんてことはないが、体調の優れないときなど、ちとつらい。まぁ、それはどんな仕事でもそうだろうけど。
で。
今日の会さんはさぼり魔だ。
パントリーに、お店で使っているはずのイスを持ち込んで、座り込んでいる。普段なら、絶対にそんなことしないのに。そもそも、忙しいしね。今日は比較的安定してるから、一向に構わないんだけど、レアな会さんが見れて役得役得。
しばらくしたら、会さんが店内でもパントリーでも姿が見えなくなった。トイレだったら、わたしにひとことかけて行くはずだし、どこにいったんだろう。って、思ってたら。
店内の、オブジェの後ろっかわ、お客さんには絶対見えないところなんだけど、そこにしゃがみ込んでる。
会さん、いったい何があったの?!
かわいいからいいんだけどさ。

会さんは、アルバイトの子の面倒を見る係りらしい。新人の子には、若葉マークのバッジを付けさせるという良心的なお店なわたしのアルバイト先。お姉ちゃん、初心者なの?って、からかわれる事もあるけれど、多少の失敗なら、初心者ならしょうがない、とお客さんも配慮してくれたり、バイトの先輩や社員さんが気にかけてくれたりで、なかなか実用的なシステムであると、わたしは思う。ちなみに、そのバッジは一年くらいで外れるんだけど、自分で勝手に外しちゃうわけしゃない。アルバイトの面倒を見る係りの人が、アルバイトの子の出来具合を見て、その子に「明日からバッジは外せ」というの。アルバイトの面倒を見る係り、要するに、会さんだ。
バッジが外れたら、いや、外してもらえたら、アルバイトの面倒を見る係りの人にありがとうを言わなきゃいけない。
もちろん、わたしはもう一人前のアルバイターだ。バッジは外れている。
でも、会さんに「ありがとう」は言ってない。
一人前と言えど、まだまだ未熟なわたしは、自分の納得できる働きが出来たとき、そのときに、「ありがとう」を言おう。そう思って、もはや一年。若葉バッジ時代を入れたら、二年。完全に、タイミングを逃しているわたしである。

作品名:わたしと会さん 作家名:塩出 快