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ツカノアラシ@万恒河沙
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有馬琳伍氏の悲劇、もしくは24人の客

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A氏の招待状とアップルパイ


 Aはアップルパイだった。
 はじまりがあるように、終わりがある。ヒトの人生の中では、多くのはじまりとおわりに満ちている。多くの始まりと終わりは似て非なるものである。
 汝に問う。さてはて、これは、終わりか、始まりか。有馬琳伍氏の奇妙な死は、それでなくても色々な怪奇が多い烏誓遊の町中を恐怖のどん底におとした。
 部屋に残されてたのは、二十四人分の皿とフォークとナイフ。白いお皿は、グレービーソースで赤く染まっている。どこから運び込んだのか、長い食卓に綺麗に並べてあった。そして、食卓の真ん中には、一際大きな皿が、これまた大きなパイの食べ残しのまま置かれていた。切り刻まれてパイ詰めにされて二十四人の紳士に喰われた、哀れな琳伍氏の悲劇的な最期。これこそ、本当の林檎パイ?
 ある人は言う。昨日の夜、有馬氏のアパート前で奇妙な群集を見た事を。群集は真っ白な長衣を着、手には松明を持って有馬氏のアパートの中の階段を二列で上って行く姿を見たと。ある人は言う、最近有馬氏は、とある会の会員になっていた事を。珍しいワインの愛好家達の集まりらしいと。そして、その会員になるにためには大変な苦労が伴うらしいが、有馬氏は簡単に入れたらしいと話していた事を聞いたと。ある人が言う。最近この街で次々奇妙な死が絶えない事を。首筋に丸い傷が二つ並び、失血して死んでいる事件の事に関して有馬氏は、どうやら一つの見解をもっていたらしいと。
 またある人が言う。昨日の夜、有馬氏の借りている部屋から、何やら呪文を唱えるような声がしていた事を。そして、まるで舞踏会でもやっているような音がしていたと。そして、最後に誰かが言う。これは、はじまりであっておわりです、と。