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かいごさぶらい
かいごさぶらい
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かいごさぶらい<上>続(3)

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「お袋ちゃん、ちょっと待ってやー」

「なんやのん?はよして~な」

「パンツ履き替えとこか、ちょっとな~、汚れてんねんやんか」小声で言う。

「なんでやのんっ!」少しの異変も見逃さない母。

「うん、ちょっと、待っててや、そのまま、座っといてや~」私は、急いで、履くパンツを取りに行く。

「にいちゃん、にいちゃん、もうでるでぇー!」

「直ぐ行くから、ちょっと、そのまま、待っててや~!」

「さあー、これに履き替えよか、気持ちえ~で、綺麗なパンツやからな」母は、履くパンツ(いわゆる、オムツ、だが、この言葉は絶対に言ってはならない、母のプライドを深く傷つけることになる)と下着、そしてスラックス、の三枚重ね着している。

「みな、ぬぐのん?」

「すぐ終わるから、あーあ、触ったらあかん、汚れるやろ~」小声で。母が足をバタバタさせる。

「はよしんかいな、こんなんで、ばかにしてーっ!」(御免なー、僕が、もっと早よ気付いてたら)と、思うのである。

PS 今朝の新聞、TVニュースで70代から80代の兄妹が、8年前から寝たきりのお姉さんを「介護に疲れた」として殺害した「老老介護」の果て、と言う。





   「しめたら、あかんやんかー」おトイレ、その(3)

2005/6/8(水) 午後 0:42
某月某日 デイ施設での母の状況を、ヘルパーさんが「今日は、笑顔でご機嫌でしたよ」、「今日はちょっと、入浴を嫌がられましてね」など、出来事を知らせて頂く。私には、これが、非常に有難い。排泄の状況も私の方から「今日はどうでした?」と極力聞くようにしている。

「つれていってくれるのん、ありがとう、とおいのん?」おトイレの時間だ。

「うん、直ぐそこやで、もうちょっと、我慢してな~」

「あいよー、よ~しってるな、かしこいな」と、母の口癖。

「はい、此処やでぇ、ほ~ら、近いやろう」

「こんなとこにあったん、せまいな~」

「ここの手摺もって、ゆっくり座るんやで」便座に座る母。

「どうや、お尻ぬくいやろう?」

「うん、なんでやろ~な、ぬくいわ!」

「ちゃ~んと、座るとこな、温くまるようになってんねんで」

「へぇ~、にいちゃんがしたんか?」

「ちゃうよ、そういう風に、出来てんねんやんか」(いい加減な返事をしてはならない)。

「ふ~うん、あっー、でてきたわ!」

「ちゃ~んと出たな!」

「うんちも、したいけどな~、どうおもう?」

「してもえ~よ、我慢したら、あかんで」

「そうかな~」

「そらそうや、我慢したら、体に、悪いねんで」

「う~ん、う~ん、まだ、で~へんねん」しばらく、かかるかと、思った私は、手洗い用にお湯が出るようにスイッチを入れに行こうとして。

「しめたら、あかんやんかー、なにしてんのんっ!」私は、うっかり、トイレのドアを閉めようとしたのだ。母は、誰かがいないと、不安になるのだ。

PS 昨日に続き、心に澱が溜るニュース。石川県の「グループホーム(認知症の介護施設)で起こった事件の地裁公判で84歳の入居者を虐待死させた介護士」の弁が報じられた。現在、こうした「グループホーム」は全国に6000以上あるという。弱者が、さらに、弱者を、、、。その裏側に「国の福祉切り捨て」や福祉を食い物にする「金の亡者」の影がチラチラ映る。





   「ぽいっ!、、、」おトイレ、その(4)

2005/6/9(木) 午後 1:45
某月某日 認知症には、自然体で対応するのが一番である。何をしようと、何を言われようと、ありのままを受け入れることが、大切だと、私は思っている。便座に、ち~ん、と座った母。

「どうや、もう出ましたか?」出たか、出ないかは、関係ない。声を掛けることに意味があるのだ。

「うん、まだ、でるような、きがするねん」

「慌てんで、え~よ、ゆっくりしたらえ~ねんからな!」

「そうかな~、でーへんかったらどうしょう?」

「出る時は、出るんやから、何~も心配せんで、え~やん」

「わかれへんねん?どうしょう、アホになってんねん!」

「阿呆になんか、なるかいな、ちゃんと、トイレに来てるやんか、そうやろう!」

「そうかな~アホみたいやねん、あーっ、でそうやわ!」

「ほら~見てみぃ、阿呆と、ちゃうやんか、ちゃんと、出るよ!」

「でたわー、にいちゃん!」と、笑顔で声をあげる母。

「良かったな~、はい、ほな、拭こか!」と、私。

「だれがー?」と、母が。

「うん、拭いたるやんか?」と、私。

「きもちわるいっ!、じぶんで、ふくわいなっ!」と母。(母はプライドもちゃ~んと持っているのだ)。

「そうか~、ほな、この紙で拭きや!」母は、九の字の九の字になって、顔が床にくっつきそうになるくらい腰を折り、ティシュを自分のお尻あたりに、当てて一生懸命拭き始めた。

「えらいな~、拭けるやん、そのまま、ぽいっと、捨ててや!」

「ぽいっ、としたらえ~のん?」

「そうや」

「ぽいっ!」と、母は拭ったティシュを、私に投げた。

「あーっ!」私の顔面にティシュが当たった。(お袋ちゃん)便器の中へ、、、。

「ぽっい、、、やんか」とは、後の祭りである。母の前では隙だらけだ。(これが手裏剣やったら死んでるなー)。





   「こうして、おくらなあかんやんかっ!」おトイレ、その(5)

2005/6/10(金) 午後 0:54
某月某日 どのような、行動を取ろうとも、それを、決して否定してはならない。認知症と言う病にかかってしまったら余計に、そこには、人間としての、自立した世界があるのだ。その時、どのように、接するか、だ。

「にいちゃん、おしっこ!」早朝、母の声がした。私は急いで。

「はいはい、行こか!」と答え、母をおトイレへ。

「ゆっくりな~、慌てんでもえ~から」母を抱き上げ立ち上がらせる。

「はよー、どこやのん?」

「もう直ぐやからな!」

「はよしてー!」

「怒ったら、あかんやん、直ぐそこやからな~」トイレは一晩中開け放してある。母が夜中に徘徊して、自分で行くかも知れないからだ。常夜灯も一晩中燈してある。眠そうな顔をしながら、母は便座に一息ついて座った。

「ゆっくりしぃや」眠そうな母に声をかける。

「、、、、、、、、」眼を閉じてしまった。

「どうしたん?出~へんの?」と声をかける。

「でるぅ!」と、母。

「そんな、怒らんと、な~」

「わかれへん、ゆーてんねん!」眠気で、ご機嫌は余り宜しくない。

「自然に、出るから、心配せんでもえ~よ」

「あー、でたわ!」

「良かったな~、気持ちえ~やろ!」

「まだ、でそうやねん」

「うんちかな~」と、言ってみた。

「かもわからん?」と、母。

「ちょっと、電気つけてくるから、出るまで、ゆっくりしぃや」廊下の電気を点けに私は急いだ。トイレに戻ると。

「うん、お袋ちゃん、何してんのん?」

「、、、、、、、、、」母が、腰を折るような姿勢で。