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ひまつ部①

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「ティア、ホームルームはどうした?」
「そんなのどうでもいいわ! さぁ行くわよ!」
俺のクラスのホームルームも始まっていないというのに、ティアは俺を多目的ルームへ連れ去ろうとする。

「だから待てって! ホームルームの10分くらい待てよ!」
「そんなこと言ってると一昨日のことここで叫ぶわよ…」
おいおい、完全に俺弱み握られてんのかよ。無茶苦茶だなコイツ…
ティアの暴走加減に一握りの不安を覚えつつも、彼女の目的は分かっていた。
仕方なく俺は彼女の従った。
ホームルームの10分くらい急いだところでどうなるってんだよ。

「蒼空、これを見て!」
「お、おぉう」
ティアがテーブルの上にどん、と一枚のポスターを広げる。

「ひもう部… んと、読めねぇ。 って、なんだこれは!」
そこには幼稚園児が書いたようなイラストと恐ろしく汚い文字が書かれてあった。
これをティアが書いたとでもいうのだろうか。どうでもいいはずなのに、なぜか同情の気持ちが大きく芽を咲かせる。

「何って、部員募集のポスターよ! 我ながら力作だと思うのだけれどどうかしら?」
えらく自信満々に広げるティアであったが、どうもこうもない酷過ぎる。
どこからこの自信が生まれるのだろうか。

「ティア… 悪いがこれじゃぁ逆効果な気がするぜ」
「何がよ! 暇を持て余し青春を無駄にしている生徒への熱いメッセージが込められているのよ! アンタにはその熱い想いが伝わってこないわけ!?」
はぁぁ、と失望したと言わんばかりの大きなため息。
いや、むしろこっちがお前の画力と字の汚さにがっかりだよ。

「とりあえずこれじゃ無理だって。まず、なんのポスターかわからん。せめて文字だけでも読めるようにしようぜ」
「ちょっと! まるで字が汚すぎて読めないみたいな言い方はよしてよ!」
…だからそう言ってるんだってば。

「そんなにこの神の力作に文句つけるなら、アンタが作ればいいじゃない! 明日までに作ってきてよ! アタシ、他にやることあるからもう帰る!」
笑ったり怒ったり忙しい奴だな。
捨てゼリフ的なものを吐き捨て、ティアは多目的ルームから姿を消した。

「っつーか、俺が作んのかよ…」
この日も陽向との約束を忘れポスター作りで帰宅が遅くなてしまった。
帰宅した俺を待ち受けていた陽向については敢えて説明しなくてもよいだろう。

翌日の放課後。
俺は仕上げたポスターを持ち多目的ルームへやってきた。
自分で言うのもなんだが、結構良くできていると思う。

「へぇ、なかなかやるじゃない。蒼空はこういう雑用に向いているわね! 採用!」
「終始上から目線はやめてくれよ。結構大変だったんだぜ、これ作るの」
「よし! 早速貼りに行くわよ!」
なんとか俺の苦労を分かってもらおうと説明をしようとするもあっさりと受け流される。
かくして、俺達2人は部員募集のために各校舎の掲示板へポスターを貼り出した。
さて、これで部員がやってくるのだろうか。
俺の努力が無駄にならないことを祈るばかりである。
そんなポスターを貼りだした翌日放課後。
入部希望者がやってくるかもしれない、ということで俺とティアは2人して多目的ルームへ籠っていた。

「蒼空! どういうことなの! ちゃんとポスターは貼ったの! なんで誰も来ないのよ!」
「いや、ポスターを貼ったのはティアだろうが。俺はポスターを運んだだけだろうに」
放課後に入ってから30分が過ぎようとしているが、一向に誰も来る気配はない。
イライラが溜まってきたのか、さっきから執拗に大テーブルの脚をけり続けているティア。
頼むから大人しくしてくれよ。
いい加減、コイツとの2人きりに耐えがたくなってきたそんな時。

「ティア! ロリがきてやったぞ! もう安心だ! ついでにはるも持ってきたぞ!」
初等部3年のロリが溢れんばかりの笑顔で多目的ルームの入り口を開け放つ。
入部希望者の登場にティアの表情もほころび、そして満開の花が咲く。

「でかしたロリ! さすがはロリだ!」
「ティア! もっとロリを褒めてくれ!」
ぎゅっと抱き合う2人を横目に一緒に連れてこられた春樹は涼しい顔で傍にあった椅子へ腰掛ける。

「はるも大変だな」
「いえ、蒼空先輩ほどではありませんよ。今朝、登校したら掲示板にティア設立の部員募集の貼り紙を見つけてしまってから、今日一日大変でしたけれども」
「ははは…」
春樹も結構大変なポジションにいるな、と感じつつ俺と似た何かを感じ親近感が沸いていた。

「あぁっ ティア! ここではちょっと! あぁっ」
「ロリ… 可愛い子ね。おねーちゃんがゆっくり愛撫してあげるから力を抜くのよ…」
「って、こらぁ! お前ら何をやってる! つーか、なんでそうなる!」
春樹に親近感がわき、ポスターの効力もあり少し落ち着いていたところで次はこれか。
ティアとロリの暴走が留まることなくそのまま進行しようとしていた。
とてもじゃないが健全な学園生活を送ろうとしている俺の目の前で行われてはいけない行為だということは目に見えている。

「「…ちっ」」
金髪と桃髪の2人は俺を一瞬見てから大きな舌打ちをする。
いや、聞こえてますからねお2人さん。

「ところで――」
春樹が何か言おうとした瞬間、けたたましい足音と主に多目的ルームの入り口が開かれた。

「お… おにぃ… ハァハァ、お兄ちゃんのぶっ… ぶ、部活なら、ハァハァ、わたしも… 入る!」
そこには息も絶え絶えに目が血走った陽向の姿があった。
陽向のその表情は俺の知らないおぞましいものだった。

作品名:ひまつ部① 作家名:天宮環