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ラビリンスで待ってて

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Episode.2





世の中にはゴマンと兄妹は存在するのに どうしてあたし達はこうなってしまったのか?

あたしなりに分析したことがある。
まず、彼が男で、6年離れて生まれたあたしが女だったってこと。


圭介が6歳の時にあたしが生まれた。

そしてあたしが小学校に上がる年に圭介は中高一貫制の全寮制男子校に入学してしまった。

女の子の体が著しく変る小学校の6年間と、男の子の体が変る中高6年間をあたしたちは殆ど接触せずに過ごしてしまった。

もちろん、里帰りはしてたけど圭介はその頃 多感な反抗期で小学生の妹のことなんか鼻にもかけてなかった。

最終的に志望大学が実家の近くになったので、彼は19歳になった時 家に戻った。

その時あたしが13歳。

中学生になったばかりの多感な年頃だ。

6年ぶりに突然家に戻ってきた茶髪の男は、あたしが覚えていた丸刈りの少年とどうしてもリンクしなかった。


圭介も家を出るときにはピカピカの一年生だったあたしが、帰ったときには生理も始まって成長が止まってるんだから、びっくりしたことだろう。

でも、6歳だった圭介はあたしが生まれたときのことをはっきり覚えている。

あたしがおむつ履いてたとき、おっぱい飲んでた時、みんな知っている。

SEXの時、圭介の方が自制心が働くのは多分そのせいだ。

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始まりはホントにくだらないことからだった。

あたしが中学2年の時、くだらない女の子グループがいた。

いわゆるいじめられっ子の 真里菜って子が隣のクラスの男の子と付き合いだした。

女子の標的にされるだけあって、男子にはモテモテの子だった。

女子グループはその真里菜を取り囲んで、部活の帰りにキスしてたとか、してないとか、嫌がる真里菜に詰め寄って、聞き出すたびに大声で笑っている。

何が可笑しいのか意味が分からなかった。

あたしはバカが大嫌い。

あたしはその輪に割って入って、通り抜ける際にこう言った。

「バカみたい。たかがキスくらいで。子供じゃないんだから騒ぐほどのことじゃないのに。」

呆気に取られる連中を尻目に、あたしは髪をなびかせその場を去った。



困ったのはその後だった。

真里菜が走って追いかけてきたのだ。

「高田さん、ありがとう。嬉しかった。」

真里菜はかわいい顔に涙を浮かべてあたしの手を握った。

あたしはクールにこう言った。

「あんたも好きな男とキスしてたんなら、自信持って堂々としてなよ。」

真里菜は感動して、目をうるうるさせた。


「そうね、あたしは彼が好きなんだもん。ありがとう。これからも相談に乗ってくれる?」


どうやらあたしのことを経験豊富な姉御にしてしまったらしい。

それからというもの、日々エスカレートしていく真里菜の体験談を毎日聞かされる羽目になってしまった。

こうなると今更「キスしたことありません。」とは言えない。

経験もないのに空想で返事をするには限界がきていた。

あたしは何とか既成事実を作ろうと焦り始めた。

そして家にいた 当時二十歳の圭介にターゲットを絞った。


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家に帰ると大きなスニーカーが玄関にあった。

ラッキー。

圭介のやつ、家にいるな。

あたしは何故か忍び足で階段を登って圭介の部屋に向かった。

ドンドンとノックしてみるが、中からは返事がなかった。

あたしは勝手に入り込んだ。

圭介はあたしに背を向けた姿勢で座っている。

ヘッドホンをしてエレキギターを弾いていた。

なんだ、それでノックが聞こえないんだ。

あたしは無遠慮に彼の頭からヘッドホンを剥ぎ取った。

圭介は本気でびっくりして、ギターを抱えたままひっくり返った。

「な、なんだよ。勝手に入ってくんなよ。」

「お兄ちゃんにお願いがある。」

あたしは圭介に詰め寄る。

「な、何?」

あたしの顔があんまり切羽詰まってたのか、圭介の顔に恐怖さえ浮かんだ。

「キスして。」

あたしは単刀直入に言い切った。

「は?」

圭介は話が飲み込めない。

「困ってるの。早くキスしないと困ったことになるの。何でもいいからして!」

あたしはギターを抱きかかえて転がってる圭介に襲い掛かった。

「ま、待て。意味分かんない。落ち着けって。」

圭介はギターを盾にして、馬乗りになったあたしを足で引き離した。

「キスしたいのは分かった。でも、せめて説明しろ。」

あたしはしぶしぶ一連の出来事を話した。

聞き終わった圭介は心底呆れた顔で言った。

「おまえら学校で何やってんの?」

「いいじゃん。もう話したでしょ。協力してよ。」

あたしはブスっとして言った。

「こういうのって好きな男の子としたほうがいいんじゃない?」

「相手がいればお兄ちゃんに頼んでませんよーだ。」

あたしは更にむくれた。

圭介は苦笑した。

「ま、いっか。どのみちお前のファーストキスの相手はオレだからな。」

あたしはぎょっとする。

「は?何言ってんの?」

「覚えてない?お前が幼稚園行く時、いつもオレの口に行ってきますのチューしてくれてたじゃん。」

いつの話だ。

「も~!どうでもいいしそんなこと。するの?しないの?嫌ならお父さんに頼むしかないんだから。」

圭介はあはは・・と笑って顔を近づけた。

唇の先であたしの唇にそっと触れる。

あたしは目を見開いて彼の顔を見た。

「これでいい?」
圭介が笑いながら聞いた。

早っ!なにそれ?

「いい訳ないじゃん。何そのテキトーなの。ちゃんとやってよ。」

あたしはブーブー文句を言った。

まだクスクス笑いながら、圭介は抱きしめていたギターをやっと床に置いた。

腕を回してあたしの頭をぐっと引き寄せ低い声で言った。

「後悔すんなよ。」

そして身動きが取れなくなったあたしの唇に自分の唇を重ねた。

唇の先があたしの唇を優しく噛む。

しばらくそれを繰り返した後、だんだん腕に力が入り、彼の唇は乱暴にあたしの中に入ってきた。

彼の舌があたしの舌を絡めて、唾液があたしの唇を濡らした。

あたしは何をしたらいいのか分からなくてされるがままになっていた。

胸が締め付けられ、体が融けていくような感覚に、耐え切れず目を瞑った。

やがて彼は顔をゆっくり離した。

放心しているあたしの顔を見て、もう一度軽いキスをする。

彼の色素の薄い茶色の瞳があたしを見ていた。



「これでいい?」

「あ、はあ、ありがとうございます。」

あたしの間抜けな返事に圭介はまた笑った。


作品名:ラビリンスで待ってて 作家名:雪猫