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ブラザーシップ

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「恵理花、こちらがお前のお母さんになる香坂あゆみさん、と息子さんの透君だ。
透君は成績優秀でこっちの私立高校にすることになってる。お前も見習って勉強教えてもらいなさい。」

ホテルの屋上のレストランで、あたしは「新しい家族」と対面した。

「よろしくね、恵理花ちゃん、娘がずっと欲しかったから嬉しいわ。」

40代くらいの小柄な女性がにっこり笑った。
む、確かに半端なく美人だ。
さすが、コブツキなのに うちのパパが釣られただけはある。
でも、こんなでかい子供がいるとは正直思ってなかったぞ。

「よろしく、恵理花ちゃん。透です。」

今時ありえない銀縁ビン底メガネに真っ白な顔。
ヘアスタイルもあるがままって感じ?
も~ほぼアキバ系じゃん。
しかも頭いいときた。
なんかムカつくんですけど。

「はあ、よろしくです。」

あたしは上目遣いにちらりと二人を見比べ、目の前のジュースをストローで吸った。
パパはこのおばさんと入籍して、うちにこの二人を連れてくるらしい。
中学1年生の女の子と、このアキバ系高校生が一つ屋根の下で暮らして心配しないのか?

パパがどうでも良さそうなあたしの態度を見てヒヤヒヤしている。
何とか場を盛り上げようと話を引っ張ろうとしてるんだけど、それがバレバレでサムイ。

「入籍は来月だが、引越しは来週にはすることになっている。
二人とも再婚同士だし、挙式はせず旅行にでも行って済まそうと思ってるんだ。恵理花も仲良くやってくれよ。」

・・・・どうでもいい情報。
も~なんか疲れてきた。

あたしは椅子から立ち上がった。

「もういいでしょ?来週引っ越してくるなら後はその時で。あたしはここで失礼しま~す。」

きれいなおばさんはびっくりして立ち上がろうとしたが、あたしは気にせず出口に直行した。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


予告どおり二人は次の週あたしのうちに引っ越してきた。
母子家庭で貧乏だったのか、荷物なんてたいしてなかった。
あたしのうちは自慢じゃないけど、まあでかいし個室も余ってたから二人増えても平気なんだけど。
でも、アキバ男がアブナイ奴だったらどうすんだろ?
ソファに寝転んでゲームをしながら、あたしは二人が荷物を搬入するのを横目で観察する。

「恵理花ちゃん、今日からよろしくね。」

きれいなおばさんがあたしに気をつかって挨拶にきた。
気にしなくてもいいのにマジウザ。

「はあ、よろしくです。」

ソファに足を投げ出したまま、あたしは立ち上がりもせず返事した。
おばさんは少し困った顔をしてダンボールを運んでいるアキバ男のところに帰った。
ちょっとかわいそうかな。
てか、あたしが気遣ってるし。
なんかめんどくさくなって、あたしは自分の部屋に引っ込んだ。





自分で思うのだけど、あたしを含めて世の中には産まれた場所を間違った人がいる。

あたしの家はパパが会社の重役だったから、生まれたときから物には困ったことがない。
欲しいものは何でも買ってもらえたし、習い事もなんでもやった。

でも、それって猫に小判だ。

あたしは頭が悪くて、何を習っても続かなかった。
大好きだったママは3年前、家を出てった。
パパが仕事ばかりで寂しかったって、ドラマでよくある台詞を泣きながら訴えてた。
つまり、昔つきあってた人と浮気してしまったのはパパのせいだと言いたかったみたい。
ママは最初あたしを連れて行きたがったけど、あたしが断った。
何でかって、相手の人が好きになれなかったから。
連れ子に性的虐待なんてよくあるしね。
ママは最初の一年は連絡くれたけど、それからぱったり止んだ。

「恵理花の妹ができたのよ。」

電話越しに聞いたママの最後の言葉がこれだ。
幸せそうに言われたって、リアクションに困るって。

「はあ、おめでとう。」

そういってあたしは電話を切った。

何が言いたいかっていうと、あたしみたいにバカで何にもできない、でもママの愛だけは必要だった子が重役でお金持ちのパパのうちに生まれたのは 猫的には小判だ。
おまけに近所でも有名なお金持ちのうちだから、ママが男と出てった噂は学校にも広まって、あたしはすっかりイジメの対象だ。
もとからやっかまれてたんだけどね。
だから、バカな子にお金なんていらなかったんだって。

反対に賢く生まれて、お金さえかければ色んな才能があるだろう子がテレビでよくある大家族のうちに生まれちゃって、中卒で新聞配達やってる現実。
世の中って不公平だ。

あたしはベッドに転がってさっきのゲームの続きを始めた。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


ドアをノックする音で目が覚めた。
ゲームしながら寝てしまったらしい。

「恵理花ちゃん、ご飯だよ。」

聞きなれない男の声?
あ、アキバ男だ。
でも、意外に低くていい声してんじゃん。
顔が見えなければ。

あたしはしぶしぶドアを開けた。
想定どおり、銀縁メガネのアキバ男が立っていた。

「今日は初日だから皆で一緒に食べようって、お父さんが言ってる。寝てた?」

は?お父さんて・・・。
もう順応してんのか、こいつは。

「分かったよ。今行きますよ。」

なんか不愉快だ。
あたしは露骨に嫌な顔をして、アキバ男を残して階下に降りた。



「では新しい家族を祝って乾杯。」

パパがビールのグラスを上げる。
も~そういうの恥ずかしいしやめて欲しい。

ダイニングテーブルにはきれいなおばさんの手料理が所狭しと並んでいる。
張り切って作ったに違いない。

「恵理花ちゃん、どんどん食べてね。おかわりあるから。」

おばさんが取り皿にサラダを分けてあたしの前に置いた。
むむ、ムカつくけど料理は上手い。

「透君はいけるクチか?今日はオレが許す。どんどんやろう。」

すでに出来上がっちゃってるパパはアキバ男のグラスにビールを注ぐ。

「あ、頂きます。」

グラスに手を添えてビールを受けるアキバ男。
おいおい、高校生だろ。

「まあ、あなた。透はまだ未成年ですよ。透もなあに?いつも飲んでるみたいじゃない。」

おばさんが慌てて突っ込みを入れる。

「いいじゃないか。オレが高校の時は酒もタバコも二十歳で卒業してたさ。」

どんな高校生だ?
パパはすこぶる機嫌がいい。
もしかしたら、パパも出来のいい息子ができて嬉しいのかもしれない。
このアキバ男こそ、母子家庭じゃなくて最初からここに生まれてたら良かったのにね。

あたしはなんだか胸が詰まって、箸を置いた。

アキバ男がちらりとこちらを見る。
それが何か勝ち誇った感じに見えて、あたしは立ち上がった。

「ごちそうさま。」

テーブルの三人はきょとんとして立ち上がったあたしを見上げた。
やがてパパが口を開いた。

「恵理花、何か言いたいことがあるなら・・・。」

もう、そういうのがムカつくの~!

「なんでもない!今日、生理なの!」

私は言い捨てて、階段を駆け上がって自分の部屋に駆け込んだ。





またそのまま寝てしまったらしい。
作品名:ブラザーシップ 作家名:雪猫