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ニードミーのルール(仮)

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「あの、志暮谷さん」
「サヤでいい」
「サヤ?」
「彩加の、サヤ」
「じゃあ、あたしも莉子でいいよ」
「サヤちゃんも、今からクラブ棟? 部活?」
「なんだ、気づいてなかったのね」
「部活部なの。私も」

「お疲れ様です」
「お疲れ。サヤ、リコちゃん」

 今更ながら、凄い面子だ。
 部長のアキは手腕もさることながらあの美人ぶり、副部長のナオは学年一、二を争う秀才で真都原の良き相方。女子部員のタカは中学時代からスポーツで様々な賞を取っているし、ユーイチは校内外問わず名前が知れ渡る程の人気者だ。サヤですら、入学式で答辞を読んでいた姿は記憶に新しい。
 その中にたった一人、平凡な自分が紛れ込んでいる。
 それが奇妙であり、誰かに対して申し訳ない気分になってしまう。

「部活部? あー、あの。吹き溜まりの」
「え?」
「いや。なんでもない」

 それでもこの部室に来るのには、大きな理由がある。
 壁に飾られた作品。
 じっと見つめていると声をかけられる。
「なぁ」
「え?」
「お前、あいつと同じ中学なんだって?」
「……あいつって、どなたですか?」
「あいつはあいつだよ。トロフィー持ってる、あいつ。今頃なにやってんのかねぇ」
「俺は好きだったんだけどねぇ、あいつの作品」
「おいおい、冗談やめろって」
「お前も、あいつの肩もたないほうがいいぞ」
「先輩の何が分かるって言うんですか?」
「お前こそ、あいつの何を知ってんだ」
「私は――」
 それ以上言葉が出てこない。
 はやくしなきゃ。
 はやく、この部活を終わらせてしまわなければ。

 休み時間の合間に、廊下でアキと遭遇する。いつものジャージ姿に気付いて声をかけると、相手も軽く手を上げて応えた。
「あ、真都原先輩」
「やあ、リコちゃん」
「南に来るなんて珍しいですね。どこかに用事ですか?」
「うん。ちょっと保健室に」
「怪我でもしたんですか?」
「違うよ。部員に話があるんだ。今日は来ているみたいだからね」
「部員?」


 僅か十分の休憩時間には、流石に保健室に人の気配はない。ノックの後に入った室内には保険医の姿すらなかった。
 そんな中、何故か制服姿の男子生徒が事務机に陣取っている。
「失礼します。キィ、まだいる?」
 衝立の向こうに声をかけながら、遮光カーテンを引き開けた。同時に耳に入る声。振り返った長めの前髪の間から切れ長の瞳が見える。
「なんだ、お前か」
「来てるって聞いたから、部活サーバーの整理頼もうと思って。これ、追加資料。今週中、出来れば今日中によろしく」
「相変わらず鬼だな。別に構わんが」
「そっちは? 新部員?」
「今主体で依頼受けてる子。松永莉子ちゃん」
「ふうん」
「で、こっちはキィこと常田遼人。トキタのキでキィね」
「よ、よろしくお願いします」
「これでも生粋の部活部員だ。よろしく」
「でも、今まで会ったことないですよね?」
「俺あんまり学校来ないし。幽霊部員っていうか幽霊生徒?」
「自虐的だね」
「本当のことだろ。それに今は、別の用事があるしな」
「じゃあ、部活までに完成させておいて」
「おー。まかしとけ」

「ただいまー」
「わー、キィじゃん!久しぶり!三週間ぶり?」
「タカも元気そうだな」
「キィは相変わらず不健康そうね」
「ほっとけ」
「俺は一週間ぶりくらいかな。タカも出払ってることが多いしなぁ」
「土日だけ朝から登校とか、相変わらず妙なことしてるね」
「過剰な勉強や雑多な馴れ合いは不必要だ」
「生産性ってやつか」
「効率ともいう。それより、一人足りないぞ」
「ナオちゃんなら職員室だよ」

「久々にみんな集まったし、今日は食堂でミーティングにしようか」
「賛成!」
「さんせー」

「で、キィ。サーバー整理終わった?」
「貰った分は。でもあれ、全部じゃないだろ。全校生徒と数が合わん」
「新年度だからね。入転退部が多くて学校側もまだ把握出来ていないらしい。梅雨頃までには揃うはずだから、届いたら引き続きよろしく」
「そうだ部長。俺のクラスに剣道の新部長が居るんだけど、補欠確保手伝って欲しいって。とりあえず最低二人」
「剣道か。今の状態でも紹介は出来るけど、確かなところはやっぱりサーバーが出来上がってからだね」
「とりあえず人数に達しなくても、途中経過として報告しておけばいい。向こうも一気に来られるより対処しやすいだろうし」

「演劇部のリハはどう? サヤ」
「市民ホールを借りてのセッティングは上手く行ってます。新入部員も慣れて落ち着いて来ているのでそろそろ引き際かと」
「じゃ、そっちも部長と確認しておこう」
「俺からは転入希望者の続報」
「この一週間で三件。どれも理由は『イメージと違った』というのが多い」
「やっぱ部活くらい充実させたいもんなー」
「中には適当を望む人間だっているみたいだけど」
「サヤ、キィ。向こうの件はどうなってる?」
「勿論抜かりなく。明日で丁度一ヶ月経過になる。ナオも手伝ってくれてるし、部員は協力的だし、楽なもんだ」
「私のほうも、対象者への説明と配布は終わりました。回収は三日後の予定です」
「よしよし。あとは、彼が直接殴り込んでくるのを待つだけだね」

「ねね、アキちゃん」
「なんだか不思議だなって」
「ここにいる奴らは皆同じだよ。上手く他人と関わって来れなかった奴、世渡り下手な奴ばっかり」
 俺なんて、危く警察沙汰だもんね。
「そういうのが、部長に逢って少しずつ変わってきてる。タカちゃんなんか凄い進歩だよ。ここに来るまでは他の誰とも会話できなかったんだから」
「見過ごせないんだ、きっと。『誰か』を見ているみたいで」(誰か=過去の自分)
「シキと同じだ。俺もあいつも、部長に拾われたのかもね」(ユーイチ)


「明、季ぃ―――っ!」
「紅葉兄……」
「偶然だな! 今帰りか? 帰りなら一緒に帰らないか!?」
「い、いや、私はまだ部活が……というより、これからバイトがあるんじゃないんですか」
「なんで敬語なんだよ、つれないな、冷たいな、淋しいなーー」
「わ、わかったから、放してくだ、放してくれると嬉しいんだけどっ」

「真都原先輩が不得意そうにしてるのって、珍しいですね」
「誰でも不得手はあるんだ。つまりそういうこと」

「失礼しま……」
「どういうことなんだよ!」
「ウチの部活は皆ボロボロと辞めていくし、折角紹介してもらった部員も、いざ始めてみたらやる気がない。このままじゃ夏の都大会まで間に合わないじゃないか!」
「確認させて戴きますが、男子バスケ部の練習内容は記入内容と本当に一致していますか?」
「当たり前だろ」
 目をそらした。
「おや。おかしいですね」
「先日手配した部員候補の方に尋ねましたが、現在のところこの内容での活動はされていないようです。平日は5時上がり、日曜は隔週でしか行われず、土曜日は午前中から部活があるものの本格的な練習は午後の二時間だけ。その間、新入部員と一部の部員は休みなしで、筋力トレーニングしかメニューに組まれていないとか」
「なにを……適当なことを言うな」
「適当ではありませんよ。キィ」
「はいよ」