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インフルエンザで過ごす夜

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   インフルエンザで過ごす夜

 インフルエンザの主な症状。
 急な発熱、高熱。関節、筋肉痛。倦怠感、疲労感。頭痛。
 そのすべてに襲われて、佐々克紀は自室に引きこもっていた。
 熱が上がり始めた頃、早々に医者に掛かって、薬はもらってきていたが、激しい頭痛と倦怠感のため、今やもう体を起こすことさえ億劫だった。
 枕に頭を押しつけるとやけに早い自分の鼓動が聞こえる。
 頭痛とは無関係なところにいる冷静な自分が脈を数えようとするが、腕を上げることも目を開けることもできないので、腕時計で時間を確認することさえできなかった。
 ――最初の薬を飲んでから何時間たった?せめて頭痛だけでもおさまれば起き上がれるのに。
 三八度五分までは動けていたのだ。それが、九度を越えてからはまったく動けなくなってしまっていた。
 ――ここまで動けないとは。
 自分を過信していた。
 頭痛くらい堪えられると思っていた。
 体の痛みやだるさも立てなくなるほどではないと思っていた。
 薬さえ飲めばすぐに治るだろうと高をくくっていた。
 妹分の少に立入禁止を言い渡したので、当分の間、ここには誰も来ない。
 普段から少以外訪れる者もいないのだ。この年の瀬に彼を訪ねてくる者など期待はできなかった。
 とりあえず意識を手放しておけばこれ以上苦しまずにすむ。
 克紀は自分に言い聞かせて眠りに落ちた。

 どのくらい眠っていられたのかはわからない。
 人の気配を感じて克紀は目を覚ました。いや、気配を感じたのではない、誰かが彼の体に触れている。ひんやりとした手が額に触れ、首筋を撫でる。パジャマのボタンが外され、脇に冷たいものが差し込まれる。
 ――体温計…。
 一体誰が。
 目を開けて確認する、ただそれだけのことが、今の克紀にはたいへんな重労働だった。確認したところで、この状況は変わらない。克紀は大人しく相手の動きを待った。
 ほどなく小さな電子音が計測の完了を知らせる。
 「三九度八分か、さすがのお前でも脳が煮えたか?」
 聞き覚えのある声と甘い香り。克紀は力を振り絞って瞼をこじ開けた。
 ――松本…遙…。
 確認するまでもない姿を確認して目を閉じる。
 最悪だ。