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放課後の住人

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田辺には恋人がいた。
だが高校生の田辺はその存在を多少重苦しく感じている。
彼は気さくで人気のある生徒会長で、息をするように当たり前に田辺を蹂躙していく。
生徒会役員でもない田辺と彼との接点はそう多くないのだが、役員会議のあるいまだけが楽に息を出来る時間ということは、意識している以上に彼との関係が重荷になっているのだろう。
先に帰ることも出来たが、そうすればまた嫌味を言われる。
田辺は時間つぶしのために、屋上へ向かった。



屋上に上ると、外は少し肌寒かった。
秋だな、と思う。
急に気温が下がったので、そろそろここで時間を潰すのも辛くなってきたかとも思ったが、他に時間を潰せるあてがなかった。
図書館は藤堂のテリトリーだ。
あの澄ました秀才面を見ると腹が立つ。
八つ当たりだと分かっていたが、藤堂は美人で頭が良く弁が立つ、それでいて侵しがたい透明な雰囲気を持つ男だった。同級生からは冗談で高嶺の花呼ばわりをされていたりもする。
そして田辺の恋人でもある生徒会長の、前の恋人だ。
おまけにいまは、新しい恋人と仲良くやっているらしい。
藤堂の持つ何もかもが、田辺を苛立たせた。
「別に、いいんだけどな」
出入り口の裏の壁に背を預け、片膝を抱えて目を閉じる。
寝たら風邪をひくかもな、と頭の隅で思った。


作品名:放課後の住人 作家名:みと