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恋の掟は冬の空

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12時


「大場の車ないや・・」
いつも大場が車を置く駐車場には見慣れたワゴン車は見当たらなかった。
「夏樹と大場君のことだから、海にでも向かってドライブ中なんじゃないかなぁ・・」
「うーん。それってたぶん当たりだなぁ、きっと」
「でしょ、良かったね大場君」
「ま、ずっと付き合ってたみたいなもんだからね、あの2人って」
「そうだねー、仲いいものね、ずーっと前から。 喧嘩ばっかりしてるように見えるだけだもんね」
「そうそう」
顔を見合わせて笑っていた。
「ここって、私、何回通ってもダメだなぁ・・」
俺が吹っ飛んだ交差点だった。
「そうかぁ。昼間に見た時に俺が突っ込んだ垣根がまだ変で、笑っちゃったけど、俺」
「もうー 劉ったら、頭から血を出して顔じゅう真っ赤だったんだから・・」
「頭って、少し切っただけでもいっぱい血がでちゃうんだもん。ハゲなのしってる、ここんとこ」
10針縫った傷跡を指さしていた。
「ハゲぐらい、いいじゃない、わかんないんだから髪の毛で、あの時には劉が死んじゃうと思ったんだから私は」
「ちゃんと、あの時直美にしゃべってたじゃん。足は折れちゃったみたいだけど、頭は打ってないよって、これはこの植木で切れただけって・・」
「だって、そんなの冷静になんて聞けないよぉ。夏樹がものすごくあわてて、私の部屋に駆け込んできて、いま、マンションの下の交通事故を見にいったら、劉がはねられて倒れてるって言って、ここに走って来たら劉って血だらけの顔で横になってたんだから、あんな顔で言われても・・」
「足が、ものすごく痛かったんだけど我慢して、心配かけないように説明したはずなんだけど・・」
「そんな事言うなら、私も泣きそうだったんだけど、しっかりしなきゃて我慢したんだから・・」
俺は笑っていたけど、直美は真剣な顔で言い返していた。
「少し、泣いてた気がするけど・・」
「あー、そんな事言うなら、病院について先生に足を触られたら、痛くて大騒ぎしてたくせに・・」
「あれは、すんげー とんでもなく、痛かったの」
笑い返されていた。

気がつくとマンションの玄関にたどりついていた。
「12時10分前です。うん、セーフかな・・なんとかイブに帰ってこれたね」
「うん、遅くなっちゃったね、自転車エレベーターに入るかなぁ」
言いながら、エレベーターに乗り込むとなんとか、ギリギリだったけど、自転車を入れてそのまま上がる事が出来た。
「よかったね、入って。これで私1人でも自転車を部屋から降ろせるね」
「部屋に置かないと、これって鍵かけても下の駐輪場じゃすぐに盗まれそうだしね」
「きっと1週間も、立たない間にだね」
「で、やっぱり、これって俺の部屋に置くんだよね・・」
「うん」
やっぱりだった。

「先に私が自転車と入っちゃうね」
「うん」
ドアを押さえて直美と自転車が入るのを待っていた。
「もう大丈夫だから、入って」
「うん、廊下に置けるなら、そこでいいんじゃないか。今夜は」
「今日は、ここでいいよね、あとでタイヤ拭くからごめんね」
一緒に電気をつけながらリビングに歩いていた。
「ふぅー ついたぁー 今日は良く歩いたなぁー」
「そうだよねー 疲れたでしょ。座っていいよー あとはやるから・・買ってきたのって冷蔵庫にあるんでしょ・・」
「うん、ごめんね、ちょとだけ休ませて」
さすがに右足が疲れていた。
「あっー 劉ぅー」
「なに・・」
あわてて横にちょこんと座って、キスしてって顔だった。
座りながらだったけど、抱きしめてキスをしていた。
長いキスだった。
「ほんとに良かったぁ。帰ってきてくれて・・」
唇を離して涙を流していた。
「うん」
ソファーの前に直美を横にして、キスを繰り返していた。
直美の手がしっかり俺の背中を抱きしめ、俺の右手は直美の頬に触れていた。
また 長いキスだった。
「良かったぁ。イブの日からからきちんとキス出来て・・ほら、今は25日になったぁ」
俺の腕時計を見ながらだった。
「イブにもキスしたかったんだもん。間に合ってよかったぁ。さっきあせっちゃった・・1分前だったんだもん・・」
「おかしいの・・」
「いいの、したかったんだから・・」
うれしそうな笑顔が目の前にだった。
「あっ ごめんプレゼント渡すの今日になっちゃったぁ・・」
「いいって、靴下編んでくれただけでうれしいから」
「えっとね、もう、きちんと用意してあるもん。それはねー・・・ちょっとまっててね」
体を起こしながらだった。
部屋の隅にさっき置いたカバンからお気に入りの手帳をだすようだった。
「あった、何回もこれ見て、ニコニコしちゃったぁ。はぃ、直美から大好きな劉にクリスマスプレゼント」
差し出した封筒には手書きの赤いリボンが描かれていた。
「開けてもいいの・・」
「うん、見て。あっ、でもドキドキしちゃう」
封筒は封がしてなかったから、すぐに中身を見ることが出来た。
「えっー こんなのいいの・・」
びっくりしていた。すごくうれしかった。覚えていてくれた事が本当にうれしかった。
「喜んでくれたぁ・・・」
「うん、ありがとうすごくうれしいよ・・はぃ」
言いながらお返しのキスをおでこにだった。
すごく楽しい、ひさしぶりの2人だけの夜が始まっていた。


作品名:恋の掟は冬の空 作家名:森脇劉生