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フレンドボーイ42
フレンドボーイ42
novelistID. 608
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KE2of4 どんなにあなたが金を出そうと

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 無法地帯イリーガリアの住民たちは皆ひとえに銃火器を持ち、焦点の定まらない目で金と欲を追いかけ回して、通りかかる旅人たちを襲撃する。このような治安情勢の悪さはさらなる悪人どもをおびき寄せ、ギャングたちは互いに牽制しあい、若い衆は一旗揚げようとやってくる。この治安情勢の悪さをどうにもできない政府は日々死の恐怖にさいなまされる善良な市民に対して1レスポンスの金すら憐れみとして与えられない財政の弱い国でもあった。
 エンリューが歩いているのはまさにそういう場所である。通りの悪者たちを剣で払いながら、しかし殺すわけにはいかないので(そういうギャングであろうと殺せば当然のように殺人罪が科される時点で、この国は特殊であると言えよう。他の国では基本的にあり得ないことである)、多少の恐怖の中で歩いていく。目指すはホテル。さすがにそこはプラネット・サテライト連盟の運営する安全性の抜群なホテルはあるのだ。しかしながらたどり着く前に死んだような旅人の屍を歩いていくのはどうにも辛いものがある。
 ここにおいては良質な宝石が安価でとれるのだが、その安価な宝石を求めて旅人も来ることが多いのだという。安価でかって高価で売れば差額が丸儲けだからである。ここでは宝石など50レスポンスから3スレッドほどしかしないというわけである。それを輸出すればこの国の財政もなんとか持ち直せるのでは、などと思ったあなたは甘いだろう。この一体の宝石採掘場はギャングが取り仕切る無法地帯の中にこそある。誰がそんなところに命を懸けて取りに行こうか。だから旅人御用達なのである。
 正直このような場所にエンリューが来る必要性は全くない。友人からは「高い金を出してでも他の星で宝石買った方がいい」とくぎをさされている。ひとえに危険だから、である。しかし、宇宙空間でシップが航続不能に陥り不時着してしまったのだから仕方がないのだ。明日の昼に新しい船がやってくると言うのでなんとかそれまでは待たなくてはならない。
 彼はホテル内のカフェにいた。とにかく暇は潰すに限る。外に興味が全くないのだから中にいるのが当然である。外のもののように死屍の山に埋もれたいなど思わない。…しかしこのカフェで時間を潰す行為すら彼は後悔する羽目となる。
 「君が、エンリューだね」
 彼の眼前には、いかにも黒い世界の住民とわかるような人物、…アクシズがいた。
 「…よく連盟のホテルに堂々と泊まれますね」
 「ここの星のホテルはなにより儲け最優先だからな。俺のようなアシッドスパークの人間でも簡単に金さえ出せば泊まれちまうんだよ」
 いくらドアはどんな武器でも壊せないとは言え、所詮ドアである。中にいないと意味がない。彼は背負った剣を確認する。
 「安心しろ…お前を父親のようにはしないさ」
 「…」
 「俺はただ単に商談を持ちかけにきただけさ」
 「…」
 「この剣…直してくれないかな?」

 「イヤです」

 「…なに?」
 「僕の父親を切った剣を直したくはありません。どんなにあなたが金を出そうとね。そんな剣なんて錆でぼろぼろになってしまえばいいんだ」
 「…怖いねえ…まあ、さすがにこんな星でお前を殺すわけにはいかないから…ひっこんどこうか。しかし、…仮にも商売人が客を選ぶのはいただけないがな」

 アクシズが立ち去ってエンリューは考えはじめる。
 自分の知り合いにもいろいろな職業の人がいるが、たとえば商人をやっているクラウディ・ジャックは、悪人とわかる男にはものを売らないと言っていた。女戦士メイプル・フェアリーは、悪に利を与えることはまったくもって納得できない、悪を助けるなどあり得ない、と断言した。確かにふつうの感覚で考えればそちらが道徳的に正しい。だから自分もそうしている。
 しかし、もしかしたら、商売人である自分たちにとっては、むしろフレンドやゼロの方が圧倒的にすばらしいのかもしれないのだ。フレンドは、たとえ相手が魔導師に見えなくても、薬草(魔導師や魔術師のような人が扱えば薬草として薬や呪文のエネルギーに変換できる植物も、普通の人にしたら麻薬の代名詞であるマリファナすら取り扱っている彼曰く、マリファナを買う人の9割がたは魔導師、魔術師などではなく、中毒者であるという)を売り、武器でも何でも売る。彼だって別に悪人じゃない。彼は村を丸ごとアシッドスパークに焼かれ、彼一人が生き延びたという。つまり悪に対し恩を売ることは、いくら自分が対価を受けようとも納得しているはずもなかった。それでもかれはそんなことおくびにも出さずに商売をしている。あるいは殺し屋ゼロ。彼だってまたフレンド同様故郷を滅ぼされた男だった。それでも彼は依頼さえあればアシッドスパークの者の依頼でも受けるのだ(ゼロにとって唯一無二の親友フレンドと、そのフレンドの友人以外なら誰だって承って殺すのだ、と過去に言っていた)。
 彼らの方が、商売人としては明らかに正しい。しかし一方で、道徳的にはクラウディ・ジャックやメイプル・フェアリーの考え方がもっともなのである。エンリューは少し考えるが、答えは当然見つからない。
 「…どちらの方がいいのかな、お父さん」
 彼は弱々しく泣き出しそうな声でそうつぶやいた。