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人間屑シリーズ

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          *

 それから日が暮れるまで私達は駆け巡った。午後八時を回った頃、ふいにミカが歩みを止めた。
「もう今日は終わりにしよう」
 私の方へと振り向いて、彼女はそう口にした。
 ミカが今日購入したヒントの回数は六回。早ければ明日にもスイッチを探し出せるだろう。それでも私は戸惑いの表情を作るのだ。組織の裏側はおろか、彼女の未来さえも知っていながら。
「でも……時間が……」
「有難う。でもまだ時間はあるから。それに家の人が心配するよ?」
「うん……」
 私を心配する家族なんて、本当はどこにもいないのだけれど。
「私も気を遣っちゃうから」
 気遣い――。それはミカに死を覚悟させる程に、彼女を疲れ果てさせたものだ。だったら私もここで引くべきだ。そしてそれは不自然な事では無い。
「分かった。じゃあ、また明日連絡して」
「でも……」
「私達友達でしょ」
 私がそう言うとミカは本当に嬉しそうに笑って「うん、分かった」と言った。

 去っていくミカの後ろ姿を見つめていると、ざわざわと心がさざ波のように揺れ始める。私はため息を一つ吐いて、それから右手をギュッと握りしめた。
 これは演技。全て演技だ。友達ごっこだ。友情と言う名のエサだ。嘘の塊のような関係だ。何も気にする事はない。初めから全て演技。演技。演技……。
 何度も心の中で呪文のように唱えながら、クロの待つマンションへと私は戻った。
作品名:人間屑シリーズ 作家名:有馬音文