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人間屑シリーズ

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           *

 クロのマンションに戻ると、クロは「おかえり」と私を優しく出迎えてくれた。
「ただいま」
 私も微笑みながらそう返す。
「さて、それじゃあ次は契約書の回収と――いよいよゲームを始めよう」
 クロはそう言うと、ソファーに座ってメールを打ち始めた。
「契約書の回収はどうするの?」
「シロの学校の近くに公園があっただろう? あそこのベンチに置かせるよ」
「大丈夫なの?」
「ああ、メールで注意は引きつけておく。シロはすぐに回収して、何気ない風で帰って来ればいい。回収は下校時刻に合わせるから、他の生徒に紛れられるだろう?」
「うん」
 制服を着て生徒に紛れる――記号としてそこに存在する。あんなにも嫌いな事だったのにクロがそうしてくれと言うのなら、それは全く不快じゃ無かった。
「契約書を回収、確認したらスイッチを探させる段階に入る」
「どこに隠すの?」
「ギリギリまで隠さないよ。適当にメールして崎村から情報を聞き出す。そして最終的に崎村の手の届く場所に置いておく。それだけさ」
「じゃあそれまでの間は?」
「好きなように過ごせばいい。メール以外にやる事なんて特に無いからね」
 クロは容易いと言った風でそう答えたが、本当に上手く行くんだろうか? ……こんな事が。
 でも私はクロを信じるしかない。だって私が信じられるのはクロだけなんだもの。

 下校時刻が近くなったので、私は制服を着て出発する事にした。
「シロ、君にばかりゴメン……」
 玄関でクロが私に言ったけど、私はそんな事は全然気にしてなかった。
「ううん、全然。じゃあ契約書を見つけたらまたメールする」
「ああ、崎村の注意は引き付けるから」
「うん、じゃあ行ってきます」
「行ってらっしゃい」
 温かい見送りの言葉を受けて、私は軽やかに歩きだした。
 人を陥れようとしているのに、何でこんなに気分が高揚するのだろう。私は少しずつ……でも確実に狂ってきているのかもしれない。

作品名:人間屑シリーズ 作家名:有馬音文