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人間屑シリーズ

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 数分後、返信メールが届いた。
『それは、契約破棄という事ですね? すなわち即時殺害をご希望ですね?』
 俺は焦りメールを打つ。
『違います! 死にたくないんです。ホントすみません』
 すぐさまメールが帰ってくる。
『それを契約破棄というんですよ。困りましたね』
 だが、俺もここで「じゃあやっぱりいいです。殺して下さい」というワケにはいかない。先輩は興味深げにやりとりを見ている。引き下がるわけにはいかない。
 俺はありとあらゆる言葉でもって顔の見えない相手に懇願した。そうでなければ、俺はもうすぐ死んでしまう。残る時間を考えるのももう嫌だ。生きたい。今、切実に願うのは生だ。死にたくなんてない。通り魔に刺されたあの男のように、病死と診断されたあの老人のように、交通事故で死んだあの女のように、列車に飛び込み自殺をしたと報じられたあの少女のように! あたかも仕方がなかった事のように日常の流れの中で処理されてしまうのなんて嫌だ! 殺されたんだ、本当は! 
 ……ん? そうだ。そうだよ! この事実を公表してしまえば良いじゃないか! そうすればコイツは殺人犯として捕まるじゃないか!
 俺がそう考えたまさにその瞬間、件の相手からメールが届いた。
『一つ、忠告しておきます。私はあなたを今この瞬間にでも殺せるという事を理解して下さい。下らない考えなど捨てた方が身のためですよ』
 開いたメールには、まるで俺の頭の中を覗いているかのような文章が添えられていた。
 なんなんだ、コイツは! 考える隙を与えないかのように、再度メールが届く。
『あなたのいる場所は……』
 そこには俺のいまいるホテル、そしてさらにはルームナンバーまでが記されていた。どうして俺の位置を正確に把握してるんだ!? 三度、メールが届いた。恐れすら抱きながらそれを開くとそこにあったのは驚愕の内容だった。
『しかし、あなたの希望は銃殺でした。隣に女性がいますね。今、この瞬間だと彼女に当たってしまうかもしれません。困りましたね』
 背筋に嫌な汗が流れる。なぜ……。俺の横で心配そうにやりとりを覗き込んでいた先輩は、心なしか青ざめているように見えた。そりゃそうだろう。どこかで誰かが俺達を監視しているのだから!

 俺は必死になった。訴えるとか公表するとかは絶対にしないから、だからどうか俺と先輩を助けてくれ! と縋った。先輩を守らなければ、という思いが俺に力を与えた。一人だったら卒倒しているに違いない。この気味の悪さは異常だった。
 そうしている内に一通の決定的なメールが届いた。
『分かりました。それでは、あなたには特別にチャンスを与えましょう。そのチャンスの値段は百万円です。ご購入頂けますか?』


          残りあと二日



作品名:人間屑シリーズ 作家名:有馬音文