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戯曲 フォビア

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第一幕
ルイス
 (花籠を持ち、少年らしい短いズボン、娼館の前に現れる)
 ああ! どうしてこんな事に!
 僕はあなたが……あなたがいたから生きていられたというのに!
紳士の声
 やぁ、君。とても可愛いね、その花はいくらかな?
ルイス
 (俯き花を差し出す) 600です……。
紳士の声
 ああ、可愛い花だ。素晴らしいよ。
ルイス
 ああ! こんな時、僕はいつもあなたを思って耐えてきた!
 あなたは決して堕ちなかった! どんな時も、いつも気高かった!
 それはこの(花籠から一つ花を手に取り掲げる)このダリアのように!
ルイス
 なのに……。なぜ……。あなたが殺されてしまうだなんて。
ルイス
 (そっと娼館の扉の前にダリアを置く)ああ……。

      (娼館の窓からリアーヌとアニタが少年の様子を伺っている)

リアーヌ
 あら、また来てるわ、あの子。あの女は死んだのに。
アニタ
 毎日毎日、ご苦労な事ね。
リアーヌ
 でも可愛いわ。
アニタ
 あら、あの子はああ見えて立派な同業者よ。
 甘く見ていたらこっちが吸い取られてしまうわ。
リアーヌ
 (肩をすくめて)おおいやだ。同業者なら知ってるでしょうに。
 私達が欲しいのは花でも愛でも無くて、ただただひたすらに『金』だけという事を。
アニタ
 (さもおかしそうに笑う)あははははは! まったくだわ!
 
      (ルイス、館の中からの嬌声に耳を塞ぐ)

ルイス
 あなたは違っていた! あなたは他の娼婦どもとは違う!
 気高くて美しい僕の希望! だから……だから伯爵だって、あなたを愛したんだ。
ルイス
 (空を見上げて)僕はね、毎日毎日あなたの為に祈っていたよ。
 教会は僕らのような人間には、とてもじゃないが行けはしない。
 だからその代わりに、あの丘で。
 あなたが好きだった、あの教会の見える丘で! 僕は毎日祈っていたのです。
 ああ、一日も早くあなたが解放されますように! って……。
 (頭を抱える)ああ、それなのに! それなのに!
 あなたは殺されてしまった! 一体誰に!
作品名:戯曲 フォビア 作家名:有馬音文