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南の島の星降りて

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暑い夏の日


目を覚ますと、9時だった。
テーブルの上には短い夏樹からの走り書きが残っていた。
[ 隼人にあって来ます。いろいろありがとう ]
なんか、短かった。
今日は稲村ガ崎は諦めた。
兄貴の部屋を片付けて、家に帰って今日はのんびりすることにした。

お昼過ぎに豪徳寺の駅について、駅前の中華やで、やっと朝昼兼用食事にすることにした。もちろんしょうが焼き定食の大盛りにした。めっちゃこれだけはうまい中華やだった。

家に帰ると、部屋の中は蒸し風呂だった。バイトしてやっと買ったばかりのクーラーをつけると、暑そうに室外機がうなりだした。
涼しくなるとさすがに昨日の疲れと満腹で寝入っていた。

電話が鳴ったのはそれから数時間たった夕方だった。
「もしもし、劉ちゃんですかぁー」
なれなれしい声だった。寝ぼけていたので
「誰・・」
って聞くと
「わーこわー。麗華だけど・・寝てたの・・」
びっくりした、麗華さんに電話番号なんか教えたことはなかった。
「わーすいません。起きてます。起きてます」
「今日、これから暇?」
なにを言ってるんだろうと思った
「え、あ、何もないですけど・・」
「じゃあ、下北沢の南口に7時半ごろ来てくれない?デートしよう」
もっとわけわからなかった。
「デートですか・・俺とですか・・」
言いながら気がついた。夏樹のことに決まっていた。
「そうそう、いいでしょ・おいしいとこでご馳走してあげるから・・」
「は、はぃ。あのー、それって、Gパンとかでいいですよねー」
「あ、普通でいいわよ。なんでそんなこと聞くのよ」
「いやーなんか、お医者さんなんでしょ・・麗華さんち?すごいレストランとかだと困っちゃいますから・・」
聞いた話だったけど、麗華さんはどこかの大きな病院の娘で、成城に住んでいるらしかった。
「いつもの格好でいいのよ・・パブだから」
わ、パブだってって思った。
「じゃあ。劉ちゃん、南口降りたところのマックの前にいるからね」
「はぃ。いきます」
麗華さんはどこからかの公衆電話のようだった。
電話を切って時計を見るともう、6時に近かった。
ものすごく寝ていたらしかった。
ここから駅まで歩くのを入れても電車で30分もあれば下北まではつく距離だった。

夏樹は隼人さんに言ったんだろうなぁ・・って考えていた。
それで、麗華さんから電話だなぁ・・
夏樹からの電話ならわかったけど、麗華さんだもんなぁ・・
夏樹は今、どこでなにをしてるんだろうって考えた。
連絡がないのはどういうことなんだろか・・
冷蔵庫の中の冷えた麦茶を飲みながらしばらく、ぼーっといろんなことを考えていた。

待ち合わせの時間にはものすごく早かったけど、出かけることにした。遅れるのがイヤだった。高そうな店に連れて行かれては困るのでそこそこの格好に着替えて出かけることにした。
下北に着いたのは7時だった。
北口の洋服やで時間をつぶして7時20分に南口に回ってマックの前に行くと
「あら、早かったわね」
と後ろから声をかけられた。
振り返ると海で見るのとはまったく違った大人の女の人が立っていた。
麗華さんだった。

それはそれは、綺麗な、大人の女だった。

作品名:南の島の星降りて 作家名:森脇劉生