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せき あゆみ
せき あゆみ
novelistID. 105
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綿津見國奇譚

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 そして軍の後方でホムラとともに石投機に使うための岩を砕くのを手伝った。そこへ報告に行ったマツリカが戻ってきた。
「あら、後方支援なのね?」
「ああ、腕の振るい甲斐がないよ。父さんの大活躍さ」
 グレンはふてくされている。
「そうでもないわ。そろそろ出番よ」
 たしかにツムカリの活躍で敵の兵士はなぎ倒されているが、将軍マタタビによって味方は押され気味だった。グレンはすっくと立ち上がると槍をもち、マタタビに挑みかかった。
「ぼくが相手だ!」
「やっと出て来たな。小僧。勇者がどれほどのものか見せてもらおうか」
 マタタビは馬上で不敵に笑った。
 グレンは眼帯をはずした。オレンジ色の光がグレンの体を包むと、宙に舞い上がった。
「こしゃくな!」
 マタタビは馬に鞭をあて、グレンの方へつっこんできた。グレンが槍を一振りすると、突風が起りマタタビの行く手を阻んだ。しかし、強靱な肉体をもったマタタビも負けてはいない。突風にもひるまず進んでくる。そして大刀をふりかざして切り込んできた。
 右に左に槍を振り回しグレンはマタタビを翻弄するが、さすがにつけいる隙がない。
(やはり戦慣れしている奴にはかなわないか)
 弱気になったわけではないが、グレンはふと思った。
「ふっふ、どうした勇者さんよ。このままでは決着がつかないな」
 マタタビはグレンを挑発する。グレンを怒らせ、無茶な攻撃をしかけさせて隙をつこうという腹づもりなのだ。
「いや、やはり将軍にはかなわないな。敬意を表するよ」
 何を思ったか、グレンは地に降り立ち槍を放り出すと膝をついて一礼した。この隙を将軍が見逃すはずがない。
「もらった!」
 マタタビは大刀を振りかぶった。その時だった。
「やあ!」
 気合いとともにグレンの槍は炎を発した。それは馬の腹をつきとおし、将軍の胸を突き刺したのだった。馬もろとも将軍は炎に包まれた。
「ぐぐっ、おまえ……こんなことが……」
「ふん。勇者を甘く見るな」
 初めて使った念動力だった。

「大丈夫? グレン」
 目の前にマツリカの顔があった。どうやら気絶したらしくテントの中のベッドに横たわっていた。
「無茶だわ。うまくいったからいいようなものの……あなたは人間なんだもの」
 念動力は体力を消耗する。グレンは槍を動かすために石の力をめいっぱい使ったのだ。それはたいへんな精神力を必要とする。
 たとえ聖霊石を持った勇者が賢者とほぼ同等の力があるとはいっても、所詮は生身の人間、かなり修行を積まなければ肉体が耐えられない。アカツキの気をもらっていなければ死んでいたかもしれなかった。
「味方は?」
「だいじょうぶよ。ホムラも手伝って決着がついたわ。将軍がいなくなったら総崩れよ」
「良かった……」
「グレン。ありがとう。わが軍の大勝利だ」
 ツムカリとホムラがやってきた。
「でも、あとがかっこ悪いな」
 グレンは横になったまま決まり悪そうにつぶやいた。
「グレン、おいらたちはヒムカたちの方に行くからね」
「あ、じゃあ、ぼくも」
 起きあがろうとしたが力が入らない。
「だめよ。あなたは三日は寝てなきゃ。石の力も体力も回復しないわ」
 マツリカはまるで姉のような口振りだ。
「ちぇ」
 グレンはうらめしそうに二人を見送った。

作品名:綿津見國奇譚 作家名:せき あゆみ