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さかきち@万恒河沙
さかきち@万恒河沙
novelistID. 1404
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【勾玉遊戯】one of A pair

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 沈黙があって――ひうっと――風が降り積もった粉雪をまきあげながら通り過ぎた。
 そして白い風に巻かれるように、女――篠崎湖珠の姿は――掻き消えた。

      ☆

「なるほどねえ……今朝はそんなことがありましたか」
 少年の言葉に、優麻は頷いた。
 少年――皇神社の神主は、今朝、彼女が訪れた庭の見える縁側を眺めながら小さく笑う。
 皇の屋敷の応接間に、ふたりは向かい合って、日本茶など啜っている。
 少年  柚真人は、優麻に、今朝の顛末を語って聞かせたところである。そして、返答を促すように上目使いで青年を見た。
「殺人の証拠だったんだ」
「それが、ですか? へえ、そうですか。……それはまたどうした気紛れでしょう。まあ、君の決めたことですからかまいませんけどね。……証拠の隠匿には、目を瞑りましょう。今回だけですよ。なにせ私の仕事は――」
「わかってるよ。だがそれはお前であって、おれじゃない」
「そうですね」
 優麻は、そう言って煙草に火を点した。対する柚真人は、大袈裟に肩をすくめて見せる。
 本日は土曜日で、青年の担当する事件についての公判の予定は一つもなかったため、彼はこうして友人と雪の日の午後の退屈を紛らわしていたのであった。
 柚真人は、それでも困ったような笑みを返した。人形のように整った顔が妖しく歪む。
「まあ、どのみち証拠にもならないだろ。いいんだよ」
「そうですか? でも、殺人事件の証拠の品だと、君は先刻言いましたよ?」
 優麻は、そういって煙を吐いた。
「……公判がなければ証拠にだって意味はないんだろ。犯人を起訴できなければ……ね」
「それは一体、どういうことです?」
 柚真人は例によって例のごとく何やら悟り切った顔をしている。しかし優麻にしてみれば、先週、少年が何やら想い遺すところがあるらしい『来訪者』から、何かを依頼されたらしいということしかわからないのだから、柚真人が断片的に言うことがいまひとつ繋がらないもの当然であった。
 そもそも優麻には、柚真人を訪れる、不可思議な『来訪者』の姿が、全く見えないのだ。
 気配なら確かにわかる。
 だが、気配しかわからない。
 柚真人が、女だというからそれがわかるのであって、優麻自身には、そこまでは判然としないのだった。