小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

妖怪のいぶき

INDEX|13ページ/15ページ|

次のページ前のページ
 

第三夜「愛しさ」




北上川の近くに病気がちな若い男が住んで居た。天涯孤独だった為身の回り一切を自分でしていたのだが、ある日の早朝、何時もの様に朝食を作っていると台所の天井から小さな蜘蛛がツツッと降りて来た。
それに気付いた男は【朝蜘蛛は殺してはならない】との祖母の言葉に従い。
「そんな所に居ると焼け死ぬぞ」と呟きそっと蜘蛛の糸を掴み外へ逃がした。

その後数年が経ち男は以前より体調が悪くなり入院してしまう。痩せ細り視力は衰え快復の見込はないものに思えた。
それでも男は何時も消灯前に訪れる看護師の優しさを支えに生きていた。
「○○さん、不自由な事はありませんか」
「ええ、貴女がよくしてくれるので助かっていますよ」男は優しい笑顔を見せた。
「いえ、私は何も…でもよかった」素敵な笑顔で応える。
目が見えないはずなのに、男は彼女を普通に眼で追い真剣な表情で呟いた。
「貴女に伝えたい事があります。もうすぐ僕は死ぬでしょう。その前に言ってしまいますが、僕が普通の人間だったら告白していました」
「私も普通の人間なら貴方と共に生きたでしょう…でも…私は…」
悲痛な面持ちの彼女に対し男は和らいだ表情をする。
「もういいですよ。僕は視力を失ってから、人とは別なモノが見えるようになりました。何となくですが…貴方は人ならざるものですよね」
男の言葉に彼女は悲しい表情で口を開いた。
「ご存知だったのですね。私は数年前に助けられた蜘蛛。貴方の御蔭で女郎蜘蛛の長になりこうして人間に変化する事も出来ました」
「やはりそうですか…それなら最後にお願いがあります。このまま天涯孤独で死ぬより貴女の血肉になりたい。そして、貴女と共に…」
「そんな…」正体を知られた彼女の目から大粒の涙が溢れる。

数日後若者と看護師は病院から姿を消した。



今回の妖怪:女郎蜘蛛【絡新婦(じょろうぐも)】、美しい女性に化けるとされる妖怪。



作品名:妖怪のいぶき 作家名:槐妖