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花火のようなあいつ

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 俺はあまり花火が好きではない。いや、花火は嫌いではない。人の集まるところが嫌いなのだ。にも関わらず、どうしてこのようなところにいるのか甚だ疑問だ。
 大体、花火大会というやつはどうして夏に開催するのか。暑いし、ヒトゴミでさらに蒸すし、蚊にも咬まれるし、鬱陶しいことこの上ない。風鈴のように涼しげでもないし、秋か冬にでもやればいいと思うが、冬に花火をするというのはあまり聞かない(少しはあるらしいけど)。花火は遠目で見るに限るのに。

 そんな俺を花火大会なんぞに誘いだせる奴はコイツだけだろう。

「なー、祐司。もっと花火が見えるところに行こうぜ」
「俺は、ここで十分だ。これ以上の人ごみは我慢の限界だ」

 コイツ、良太郎が親友でなければ。というか、コイツの誘いじゃなければ絶対に来ない。こんなところには。
 良太郎は一言で言えば、陽気な野郎だ。お祭り大好き、つるむの大好き、煙と何とかの通り高いところも好きだ。そして、俺はそれに巻き込まれる。

 こんなに好みが違うのに何故か付き合ってしまう。それは単純に良太郎がしつこいからだと思っていたが、どうも最近それも違うようだと気づいた。
 しつこいのが嫌ならば無視してしまえばいいだけだ。こんな人ごみにも付き合わなくてすむ。

「えー。花火なんて年に数回しか見れねーんだから、近くで見なきゃ損だって!」
 そう言って半ば強引に俺をどんどん人ごみへと追いやる。
 その通りと一緒に来ているツレもどんどん進んでいく。

 その強引さに逆らえない。決して人を不快にさせない強引さ、というものがあるのだということを良太郎のおかげで知った。「仕方がないな」と最後には思ってしまうのだ。

 祭り好きの良太郎は心得たとばかりに花火鑑賞に絶好のポジションをキープしたのであろう、「この辺りでいいかな」と言う。
 程なくして、花火の大音量と圧倒的な光の波が眼前に広がる。まさしく光の花だ。

「おおー」
 と、喜んだ声を発している良太郎を横目に、いたって冷静に花火を眺める。
 矢継ぎ早に次々と打ち上げられる花火。菊、牡丹、その間を割って入るようなスターマイン。色とりどりの光の花が川面から立ち上がるように空へ昇り咲かせていく。破裂音が身体を揺さぶる。時間を忘れる美しさをその空間は持っている。

 数分続いていた打ち上げの時間が終わり、少しの静寂。歓声も納まる。
「綺麗だなー!」
 良太郎が話しかけてくる。その語調は興奮気味だ。
「ああ」
 冷静に返す。
「なんだよー。もっとすげーとか感想あるだろー」
「そうだな」
 良太郎は思ったことをそのまま言葉にする。いつでもそうだ。
 いろいろとお節介を焼いてくるのも、強引に人を誘うのも、思ったままの行動だ。裏表なんて全然ない。
 俺は、人のことは人のことと放っておくし、自分が行きたい場所には一人で行く。それも思ったままの行動ではあるし、正直、良太郎の人のことを放っておかない性質に苛々させられることもある。

 でも、火が水に勝てないように、裏表のない行動に、コイツの馬鹿正直さ加減に勝てる気がしない。

「面白いことはな、皆でしたほうが面白いんだよ」
 と、いつの日かの良太郎の言葉を思い出す。

 俺はこんな性格だし、それを変えるつもりも更々ないが、良太郎のこの誘いにはずっと付き合ってしまうのだろう。
 現に今、あんなに嫌だったこの場所に、花火を観るために立ち、夜空に浮かぶ花を美しいと思いながら見ているのだ。

 再び始まった打ち上げ花火に歓声が上がる。

「この後さー、大塚ん家《ち》に寄って呑もうぜ」
 そんなことを言ってくる。俺がこういう誘いを何度断ろうとも良太郎は誘ってくるのだ。
「ああ」
「お。一度でそんな返事聞いたことねぇのに珍しい」
「たまにはな……」

 花火と同じように俺の返事も年に何回かは変わるのだ。
作品名:花火のようなあいつ 作家名:志木