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大和けいすけ
大和けいすけ
novelistID. 14220
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OutMajic

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第零話

僕は魔法使いが嫌いだ。
 魔法使いは偉そうだ。
 僕月峰司がそう思うのは育った環境が特殊だからなのかはわからない。他の人と少し違う力を持っているからって、自分たちは偉いのだと言い張っている。
 それは違うのに。人っていうのは皆平等なのに。
 そんなこともわからないのだろうか?
 そもそも現代における魔法使いとは、一貫して「芸術家」と呼ばれていることのほうが多い。魔法という未知の力を使い、幻想的な物を作り上げている。主に絵画が多いが、建築物も魔法使いが作るものとして含まれている。だが、魔法だけで作品を創ることは難しいと言われており、現代の科学技術では不可能な領域を魔法で補い、作製している。だが、それはほんの一部の魔法使いがやっているだけで、魔法使いのほとんどが「アトリエ」と称した研究室で作品をひとりで研究・作製している。それでも、全てが魔法というわけではなく、どうしても現代技術が必要不可欠なのは確かなようだ。それが御祖父さんから昔聞いた話だ。
 昔の魔法使いというのは、戦争の道具として存在していたと聞いたことがある。現代では芸術家としての役割がほとんどだ。確かに対人、あるいは対兵器の魔法なんてものが使える人が現在でも存在しているのかもしれないが、現代では禁忌とされている。現代に生きる魔法使いのほとんどは芸術家として名をはせ、世界的にも有名な人が多い。
 そんな世界的に地位も高い魔法使いも万能ではない。
 そもそも魔法を使うには持って生まれた才能はもちろんのこと、「マナ」と呼ばれる精霊たちの協力が必要不可欠である。
 マナは世界に存在し、それぞれ火、水、風や、力や音を司る。その精霊たちに協力を要請し、作品を作製する。昔は精霊の聖域という場所が世界の至る所にあり、人間と共存していたそうだが、魔法使いの減少とともに、あるいは自然の崩壊とともにその数を減らし、今では数えるほどしか存在していないのだという。

                 ◆

 僕が魔法使いを嫌っている理由。それは大したことではない。僕は、代々魔法使いという家に生まれた。現代ではもう珍しいといえるくらいの旧家だ。魔法が滅びたわけでもなく、受け継ぐ者が少なくなったわけでもない。だから魔法使いが嫌いになった。父親から「おまえは魔法使いになるんだ」と言われてきたからだ。運命として受け入れるなんて10歳の自分に出来るわけがなかった。
 運命の日、人生の分岐点とは必ずやってくるものだ。
 それはとある日、父親にほとんど無理やりに連れて行かれた魔法工芸展で見つけたひとつのオルゴール。音も色も。全てが美しかった。この色彩は魔法でしか出せない「無限虹」と呼ばれているそうだ。七色の虹とはわけが違う。また音も美しい。聞いた人が思わず立ち止まってしまうような、そんな綺麗な色を奏でていた。魔法が嫌いな自分にとって信じたくないが、間違いなく惹かれていた。そして「彼女」に出会った。

「そんなに美しいか?」

 僕が、『魔法オルゴール』と名札が付いているディスプレイに釘づけになっていると、後ろから声をかけられた。振り向くと、少し変わった服を着た、女性。僕は困った。目の前にいるのは魔法使いと思わしき女性。どう反応していいかわからなかった。年齢は・・・わからない。

「目の付けどころがいいな。これは「オートマジック」と呼ばれるものだ」
 私の初作品だ、と付け加えた。予想が確信に変わった。間違いなく魔法使いだ。

「オートマジック?」

「そのオルゴールは、人に反応し、それぞれの音色を見せる。私がそのように作ったからな」

「そのオルゴールは"オートマジック"で出来ている。全て魔法によって出来ている。構造も部品も」

・・・!?

 僕の反応を見て予想通りというように女性は笑っていた。

「オートマジックとは独立したという意味を持つ。だから全て魔法で創られ動いているんだ」

――全て魔法で?

「確かにどうしても魔法だけでは作品を作るにはかなりの技術力が必要となる。それこそ繊細な力、技術を必要とする。才能以上のものが必要となるだろう。だがその不可能を可能にする者こそが本当の魔法使いだ。師匠の言葉だがね」

そう言って、目の前にあるオルゴールを愛おしそうに見つめていた。

「長かった・・・・。これを世に出すことを師匠は許さなくて破門寸前にまでなった」

 名前もわからない魔法使いの女性は、嬉しそうだが、どこか悲しそうな表情をしているように見えた。そして女性は楽しんで行ってくれとでも言うかのように手を振ってどこかへと消えて行った。
 もう僕は一度オルゴールを見る。美しくもどこか悲しげな曲。
 そこから奏でられるメロディーは聴く者の、心そのものではないか。僕はそう感じた。

                  ◆

 あれから、僕は探し続けた。彼女の存在を。よくわからない。あんなに魔法使いが嫌いだった自分がどうしてこんなにも一生懸命になっているのか。
 そして、8年の月日が経った。大学に進学した僕はあの女性のことをほとんど諦めかけていた。それでも忘れられず、探していた。
 僕はいま魔法使いを目指して勉強している。皮肉なものだ。嫌いなものに影響されてそのまま道に進んでいるのだから。だけど思った。あの人は違う。自分の父親のように魔法使いというだけで権力を振り回している人たちとは違うのだと。そして忘れられないでいた。魔法使いを目指すということを黙って聞いていた爺さんがかすかに笑ったことを。


第一話
 東京近郊にある立浪中央大学。
 僕、月峰司はここの2年生だ。
 ここはどこにでもある普通の大学。だが、それは仮の姿と言ってもいい。ここは大学とは名ばかりで、現在では世界にも数か所しかない「魔法」を学ぶことができる教育機関なのだ。僕は「魔法技術学部」に属している。ここでは主に魔法技術で造る芸術について学べる。絵画や音楽、工芸もその部類に入る。この他大学には魔法技術研究学部がある。魔法に関係ない学部は、体育学部と情報技術学部だ。学生数も多いいわゆるマンモス校で、少子化で騒がれる近年もその風に当たることはない。
 現在世界には魔法使いが少ないというわけではない。ただ、ここのように多数の学生に技術を提供するという学校がもうほとんど存在しない。魔法を学ぶには「ラボ」あるいは「アトリエ」と呼ばれる場所に自ら出向き、魔法使いに直々に弟子入りするしかない。この大学はその「ラボ」が複数存在し、魔法技術学部の3年生からどこかに在籍することになる。
 この大学に教授として常勤している魔法使いはいわゆる「移民」と言ってもいい。数十年前、魔法使い達は日本の南部に魔法使い自治区「イリス」を作った。そこに日本に古くから住む魔法使いのほとんどがここに移り住んだ。それは魔法が他民族に漏れるのを防ぐためだ。だが、魔法技術を広めようという魔法使いもここにいるのだ。その魔法使い達はこの大学に教授として勤めている。



「よう、司」

 講義に行くため、二階の渡り廊下を歩いていた僕に後ろから声をかけられた。

「なんだ、秀か」

僕は振り返り、短く、そっけなくその人物の名前を呼んだ。
作品名:OutMajic 作家名:大和けいすけ