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ワールドエンドクリムゾン-3 ウィリアムとエドワードの場合

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「坊ちゃんまた来たのかよ。困った貴族さんだね。」
万厄介事万事解決いたしますという看板をかけた一軒の家の戸を開けると、この家の主であるウィリアムが優雅にコーヒーを飲んでいた。
「ふん、いつも閑古鳥が鳴いている店に来てやっているんだ。ありがたく思へ。」
そう言いつつ空いている椅子に腰掛けるエドワードにウィリアムは律儀にコーヒーを出す。
「それで、麗しき学院の頃からの腐れ縁の君はなにをしに来たのかな?」
古くから続く貴族で魔術において国内外にも名門とされるアシュレエイ家出身のエドワードと成り上がりで爵位を金で買った父親を持つウィリアムは魔術高等学院からの腐れ縁だった。
「暇だろうから、仕事持ってきたんだ。」
「は? 俺に仕事、なんか裏がありそうで怖いな。」
コーヒーをすすりながらウィリアムはエドワードに話を促す。
「人探しをお願いしたい。」
そう言って一枚のポートレートをウィリアムに見せる。
「誰だ? 教会の人間?」
白い教会所属をあらわす衣装を身につけた良く似た二人が写っている。幼い少女たちの表情はなにもなかった。
「実はこれは結構前に撮られたもので最近のがないのだが、お前に探してもらいたいのはこっちの子だ。」
どことなく気の弱そうな方の少女をエドワードは指でさす。
「前ってことは成長してるよな。女は一日で変わるんだぞぉ。」
「お前の軽口はいい。で、引き受けるか?」
エドワードは懐から札束が入った封筒を取り出すとテーブルの上に置く。
「今回は・・わけは聞かない方がいいな。」
明らかにいつもの厄介事の前金とは違う額を封筒の厚さで感じ取りウィリアムの表情は硬くなる。
「かならず生きて、しかも無傷で探し出してくれ、外に不慣れなはずだからこの街からでてはいないはずだ。今回は断ってもかまわない。そのための口止め料もかねている。この件に関わりもしものことがあれば、俺もお前もただではすまないはずだ。」
ウィリアムは封筒を手に取る。
「受け取りのサインはいらないな。」
軽くそういうと封筒をしまってしまう。
「引き受けるか?」
「いつもお世話になってるからな。人捜し、引き受けるよ。」
ウィリアムの笑顔にエドワードをほっと息をはく。
「お前が俺のとこにそんな重要な案件をもってくるってことは、俺が以外に適任者はいないってことだからな。」
ポートレートの少女を見つめながらウィリアムは笑う。
「正直、うちの部下は表だって動かせなくて困っていたんだ。何も聞かず、探してくれ。」
「あいよ。」
そう言うとエドワードは立ち上がり、足早に去って行った。
「んじゃ、名前も知らないお姫様探しを始めますか。」
ウィリアムが口笛を吹くとどこからともなく色とりどりの小鳥が集まる。
「街中を探してこい。」
小鳥たちは一斉羽ばたき、そして壁をすり抜けて外へ飛んで行ってしまった。
学院時代にはその実力は当代きってのものと噂されたウィリアムの魔術は己の血液を媒介とした遣い魔を得意としていた。
「さぁ、看板に恥じない様やるか。」
街中に放った鳥たちが情報を持ち帰るまで、ウィリアムはもう一度ポートレートを眺めていた。