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ワールドエンドクリムゾン-2 イベールの場合

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イベールは北の軍事大国ゾロアスから逃げてきた。
王家から追われたためにこの国に逃げ今も隠れて生活をしている。北国の生まれのためこの国の人とは違う銀色の髪を揺らしながら書店でぼんやり専門書を眺めている。
今月の残っているお金と本の金額を頭の中で計算して、今日は諦めようと店を出た。その時道を走ってきた子どもとぶつかった。
「痛っ・・・。」
イベールはその場に尻餅をついてしまう。向こうも小柄な少年も反動で倒れていた。
「す、すみません。ごめんなさい。」
帽子を目深に被って少しだぼついた服を着ている少年が小さく謝ってくる。
「私は大丈夫、あなたは怪我していない?」
少年に手を差し伸べると恐る恐る華奢な手がイベールの手を掴んだ。
「大丈夫です。」
そう答える少年だがよく見れば手がすり切れている。
「手、すりむいてる。私の家がすぐそこだから、手当してあげるよ。」
「えっそんな大丈夫です。ホント、・・僕はもう行かないといけないので。」
立ち去ろうとする少年を捕まえてイベールは首をかしげる。
「別に、取って食べたりはしない。消毒して手当てしないと、その傷は痛いと思う。だから、駄目。」
戸惑う少年の手を引いてイベールは歩き出す。戸惑う少年は逃がしてくれないイベールに諦めたのが大人しく従った。道を歩く人の注目を集めたくなかったらしい。
「私はイベール、よろしくね。」
少年は答えてくれなかった。イベールはそれを気にせず自分が下宿している家まで歩いていった。